ゆっくり効く薬のおはなし

2017年 8月 1日 火曜日

徐放錠(徐放性製剤)という言葉を皆さんはご存知ですか?

今回は小さな錠剤の中に、ビックリするような工夫をしている薬の話です。

 

その前に、まずは口から飲み込んだ薬(今回は錠剤とします)が身体の中でどうやって効き目を発揮するかについて説明したいと思います。

一般的な錠剤は主薬(有効成分)と添加物を混ぜた後、粉末状の材料に圧力をかけて形成し、皆さんよくご存知の錠剤として生まれ変わります。

口から飲み込まれた錠剤は、例外もありますが胃で崩壊(水分が錠剤に浸透することで形が崩れます)し、溶け出した有効成分が小腸から吸収されて肝臓まで到達します。

そこから体内の血流にのって、身体の各組織(患部)に辿り着いたのちに期待された効果を発揮します。

それに対して徐放錠は、溶け出す有効成分の量をコントロールすることで血流にのっている薬の量(血中濃度)をより長く一定に保つことができます。

これは何でもないことのように思えますが―――

・治療に必要な血中濃度を維持できる時間が長い

→薬の服用回数を減らせる

・血中濃度を一定に保ちやすい

→濃度が上がりすぎることによる副作用のリスク、飲み忘れなどで濃度が下がりすぎた場合の効果低下のリスクの軽減

といったメリットが期待できます。

 

ちなみにこの徐放錠、内部の構造は錠剤の種類によって様々です。

・ゆっくり溶け出す錠剤を早く溶ける錠剤で覆う(ロンタブ型)

・それぞれ溶けるスピードが異なる有効成分の顆粒を、複数一緒に固めて錠剤にする(スパスタブ型)

・特殊な材料の中に有効成分を散りばめ、ゆっくり溶け出すようにする(ワックスマトリックス型)

…などなど

上で紹介した以外の内部構造を持つ徐放錠もたくさん開発され、医療現場で使用されています。

 

徐放錠の素材によっては体内で消化されず、便と一緒に排泄されてしまうタイプもあります。

これはゴーストタブレットと呼ばれる徐放錠の抜け殻のようなものです。

決して副作用やご自身の身体の異常ではないですし、激しい下痢などがなければ有効成分もきちんと体内に吸収されているので安心してください。

逆に「薬がそのまま体の外に出てきている!」と不安になって徐放錠を噛み砕いたり、潰して服用したりすると一気に有効成分が身体に吸収されてしまい大変危険です。

 

ご自身の服用されている薬が徐放錠なのか、そうでないのか気になったら、かかりつけの医師か薬剤師に質問してみましょう。

指先ほどの大きさの錠剤にも、服用する人のことを考えた工夫がつめこまれているのですね!

 

参考

日本臨床薬理学会 薬の質問箱:https://www.jscpt.jp/ippan/kusuri/index.html

日本薬剤師会 調剤指針

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