坐剤のはなし
2012年 11月 15日 木曜日
複数種類の坐剤が処方された時、使う順序はどうしたらいいのでしょうか?
原則的には先に抑えたい症状に対して出されたものから用います。
ただし、順番により前に投与した坐剤の基剤の影響を受けてしまう事もあるので注意が必要です。
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坐剤の基剤には大きく分けて水溶性の基剤(主としてマクロゴール)と油脂性の基剤(主にハードファット、グリセリン脂肪酸エステル)があります。
油脂性基剤を用いた坐剤は直腸に挿入後10分前後で体温により溶けて薬剤を放出します。
水溶性基剤を用いた坐剤は直腸内の水分を吸収して溶解し薬剤を放出します。
これらの坐剤を連続して使用すると、水溶性基剤から放出された薬剤が油脂性基剤に取り込まれてしまい、吸収が遅延する恐れがあります。
実例として、アセトアミノフェン坐剤とジアゼパム坐剤を併用する場合、水溶性基剤の坐薬から放出されたジアゼパム(これは脂溶性)が、油溶性基剤に取り込まれ、ジアゼパムの血中濃度の上昇を遅らせることがあることから、「熱性けいれんの指導ガイドライン」によるとジアゼパム坐剤投与後少なくとも30分以上間隔をあけることが望ましいとされています。
また、モルヒネ坐剤とNSAIDsの坐剤を併用する場合は、次のような影響を考慮する必要があります。
★水溶性基剤を用いた非ステロイド性消炎鎮痛剤の坐剤(Ex.インドメタシン)との併用で,基剤の影響により本剤の吸収が低下するとの報告がある.
【機序・危険因子】
直腸内の水分が水溶性基剤の溶解に消費されるため,モルヒネの溶解が不十分になると考えられている.
★脂性基剤を用いた非ステロイド性消炎鎮痛剤の坐剤(Ex.ジクロフェナクナトリウム)との併用で,主薬の影響により本剤の吸収が上昇するとの報告がある.
【機序・危険因子】
非ステロイド性消炎鎮痛剤が直腸粘膜の透過性を亢進することによると考えられている.
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坐剤の基剤を含めて医薬品の添加物は、それ自体には薬理作用を示さないものが認可されていますが、意外なところで薬物動態に影響を及ぼす可能性がある一例としてご紹介しました
<参考文献>
・武井研二・他:アセトアミノフェン坐剤の併用がジアゼパム坐剤の直腸からの吸収に及ぼす影響.
日本小児科学会雑誌,100(8),1347-1355,1996
・モルヒネ塩酸塩坐剤添付文書
Posted by pharmacist008.
カテゴリー: コラム.