秋の薬草のはなし
2015年 9月 15日 火曜日
まだ少し早いかもしれませんが、もうすぐ秋がやってきますね。
秋と言えば、食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋と色々ありますが、秋の七草、イチョウにモミジ、コスモス・・・などなど、木や草花が豊かな季節でもあります。
じつはその中には、おくすりとして使われるものもありますので、いくつか紹介してみたいと思います。
【キキョウ(桔梗)】
秋の七草の1つで、8~9月にかけて青紫色で星形の花を咲かせるキキョウですが、根っこの部分のサポニン類という成分がおくすりとしての効果をもつことが知られています。
実際にはほかの生薬との組み合わせで、咳を抑え、痰の切れを良くする目的や、炎症を抑え、膿を取りのぞく目的で使われています。桔梗湯(ききょうとう)や排膿散(はいのうさん)という名前を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ちなみに、キキョウはつぼみの状態の時に花びら同士がくっついていて風船のように見えるため、海外では“balloon flower”と呼ばれるそうです。なんだかおしゃれですね。
【クズ(葛)】
葛根湯(かっこんとう)が有名ですから、知らない人の方が少ないかもしれません。こちらも秋の七草の1つとして知られており、8~9月にかけて紅紫色の花を咲かせます。
葛“根”というくらいですから、根っこの部分をおくすりとして用います。解熱鎮痛作用や発汗作用を持ち、例えば葛根湯として風邪のひき初めや肩こりなどに使われています。
吉野葛など食品としても日本人になじみの深いクズですが、2008年には宮崎大学によりクズからバイオエタノール燃料を生成する技術が開発されています。医食のみならず資源としても一役買っており、様々な面で私たちの生活を支えてくれているのですね。
【イチョウ(銀杏)】
秋も半ばに入ると山や街路樹をきれいに彩ってくれるイチョウですが、じつは欧米においてはイチョウ葉のエキスがお薬としても使われている国があります。
イチョウ葉エキスの中にはさまざまな化学物質が含まれており、その中でもテルペノイド、フラボノイド配糖体と呼ばれるいくつかの成分が、抗酸化作用や血を固まりにくくする作用を示すことが知られています。実際にヒトにおいては、記憶力低下・認知症の改善、循環機能の改善が認められることが臨床試験(治験)などで判明しています。
ただし、このイチョウ葉エキス、日本でも健康食品として売られていますが、欧米でくすりとして売られているものと品質・含量が同レベルであるとは限らないことに注意してくださいね。
今回は3つ紹介させて頂きましたが、ほかにもおくすりとしての働きを持つと言われている秋の草花がいくつかあります。
季節を彩ってくれ、心を豊かにしてくれる草花ですが、このように意外な一面を持っていることを知ると、普段見かける木や草花もいつもと違って見えてくるかもしれませんね。
(参考資料)
(公社)日本薬学会.“薬用植物一覧” http://www.pharm.or.jp/herb/list.html(参照2015.8.14)
(公社)東京生薬協会.“新常用和漢薬集” http://www.tokyo-shoyaku.jp/f_wakan/(参照2015.8.14)
(学)東邦大学 メディアネットセンター.“薬草園の世界” http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/yakusou/yakusou.htm(参照2015.8.14)
(独)国立健康・栄養研究所.“イチョウ葉エキスの有効性および安全性”. http://www0.nih.go.jp/eiken/chosa/IppannGingko.html(参照2015.8.14)
Posted by pharmacist008.
カテゴリー: コラム.