錠剤の刻印のはなし ~阪神淡路大震災の記憶から~

2024年 2月 1日 木曜日

令和6年能登半島地震により、被災された皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。
被災地域の皆さまに一日も早く平穏な日々が戻りますことを心よりお祈り申し上げます。

 

今回は自分の経験から「お薬の一包化と刻印鑑別」についてお話したいと思います。

 

【29年前の1月17日】

1月17日は私にとって特別な日です。朝、5:46に黙とうし、仕事が終わってから神戸に移動して「阪神淡路大震災1.17のつどい」に参加します。

さて、話は29年前に遡ります。私は被災地から7km程離れた郊外に住んでいて家族も親戚も全員無事でした。当時、薬学部の修士2年生だった私は1週間ほど被災直後の長田区保健所でボランティアをすることになりました。
地元の薬剤師会や各地から応援に来られた薬剤師の指示に従い、何もない区役所の一室を簡易薬局に設営するため調剤棚や薬を運び込む。何をすれば良いか分からない私たち学生ボランティアを尻目に薬剤師はてきぱきと薬局を作っていく。そう、私が担った作業の大半は力仕事でした。

 

【ひたすら錠剤の刻印を鑑別】

そんな学生ボランティアにも重要なミッションが与えられました。それが錠剤の鑑別です。

錠剤には必ず識別コード(記号や数字)が印字されていて、「刻印」とも呼ばれます。これを調べれば、その薬の種類や用量を判別することができます。

医師や看護師が簡易薬局に持ってきた錠剤の刻印を見て、「これは●●錠の〇㎎です!」と薬の名前と用量を薬剤師に伝える。ひたすらこの作業に追われましたが、当時の私には、その重要性はわかりませんでした・・・

 

【その感謝状には本当に感謝がこもっているはずですよ】

時は流れて30歳代の頃、私は製薬企業で薬剤師向け情報誌の編集に携わっていました。そんな中、災害医療で取材した薬剤師から「被災地では患者さんの薬がわからなくて調べるのが一苦労。これを解決するのが薬剤師の大切な役割の一つなのです。」と伺い、「私も学生ボランティアでやりました。感謝状をいただきました。」と伝えると、「その感謝状には、本当に感謝の気持ちが込められているはずですよ。」とねぎらいの言葉をいただきました。

しかし、なぜ、災害現場で錠剤鑑別の相談がそんなに多いのか、そのことに気づいたのはさらに先のことでした。

 

【一包化と刻印鑑別】

さらに時は流れて50歳を超え、私は在宅医療に特化した薬局で一包化薬の調剤と監査に奮闘していました。ご自身で薬を管理できない患者さんや、介護施設の患者さんの多くは一包化で調剤されます。一包化薬は用法ごとに錠剤やカプセルがパックされているので、患者さんは間違わずに服用できますが、服薬状況のわからない患者さんから「はい、これを飲んでます!」と一包化薬を渡されると・・・

そう、パックされた錠剤やカプセルだけを見ても、何の薬かすぐには分からないんですよね。

着の身着のまま、手元にあった一包化薬を持って避難した。そんな事情があって、災害現場では錠剤鑑別の相談が多いのかもしれません。

 

【飲んでいる薬が分からなくなったら・・・】

 

服用している薬が分からなくなったら薬剤師に相談してみましょう。災害で避難したような時でも、薬剤師に安心して相談してください。

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