『オブラート』のおはなし
2015年 11月 15日 日曜日
「薬を飲むときにオブラートを使いたいが、口の中に貼りついて困る」という患者さまの声を聞いたことがあります。こんな経験で「オブラートは苦手…」と思い込んでおられる方はいらっしゃいませんか?
そう言えば、本当のことをストレートにズバリ言わずに、少し遠回しに、やんわり言うことを「オブラートに包む」なんて言いますね。物事もやんわり言われれば、受け入れやすいですよね。
「オブラート」はそのままでは飲みにくい薬を飲み易く包んでくれる優れモノ。上手に使えばお薬をとっても楽に飲むことができます。
オブラートとは元々、キリスト教の儀式で使用されるウェハースに似た無発酵の薄焼きパン(聖餅)のことだそうです。これに薬を包み水に浸して柔らかくした上で服用していたようですが、これは現在見られるような薄くて柔らかいものではなく、硬質オブラートと呼ばれるせんべい状のものだったそうです。
現在使われている柔軟オブラートは、1902年に三重県の医師小林政太郎が、その製法を発明。なんでも炊飯時に蓋のところにできる薄いデンプンの膜を見て、母親の飲みにくい薬を包んであげられるのではないかとひらめいた、というエピソードを聞いたことがあります。
さて、このオブラートですが、薬を包んだものをそのまま口に入れ、水で飲みこもうとすると、最初にご紹介した患者さまのように口の中の唾液で一部とけたオブラートが糊のようになって口の中に貼りついたり、そのせいでオブラートが破れて粉薬が口中に広がったりしてうまく飲み込むことができません。
オブラートは糊状に変化させたデンプンを乾燥したものですので、水分があるとまた糊状に戻ります。この性質を利用して、お薬を上手に飲むオブラートの使い方をご紹介します。
☆オブラートの使い方☆
①薬をオブラートで包む。(閉じ口にほんの少しお水をつけるとくっつくので閉じることができます)
②オブラートをスプーンの真ん中に載せて、水に浸す。
③オブラートが水を含んだら、スプーンをすくい上げる。
④水で膨らんだオブラートをかまずにツルっと飲みこむ。
またはスプーンを使わずに、薬を包んだオブラートを乾いた指で持ったままコップのお水にちゃぽんと浸し、すぐに口に入れてお水でつるっと飲み込んでも大丈夫です。
口に入れるまでに時間がかかりすぎるとオブラートがとけて重みで破れますので気をつけてくださいね。
この方法は、粉薬に限らず、錠剤を飲み込みにくいお子様や高齢の患者さまに錠剤をお飲みいただく時にもお使いいただけます。
最近ではお薬を飲みやすくするゼリー類もいくつか市販されています。どれも服薬しやすい良い製品ですが、オブラートと比較するとやはり高価で、毎日使用し続けるのには少し負担があるかもしれません。 水分を含んだオブラートは、小さなゼリーのようになり口の中に貼りつかず飲み込みやすいですよ。円形だけでなく、包みやすいように形を工夫した物もあります。一度お試しになってみてください。
余談になりますが、海外在住の友人にオブラート事情を尋ねてみたところ、アメリカ、イギリス、ブラジル、いずれの国にもオブラートで薬を飲む習慣はない様子でした。そもそも海外では粉薬があまり使われていないようです。
参考ホームページ:三重県環境生活部文化振興課 歴史の情報蔵ホームページhttp://www.bunka.pref.mie.lg.jp/rekishi/kenshi/asp/hakken/detail.asp?record=272
Posted by pharmacist008.
カテゴリー: コラム.