生薬のおはなし

2023年 4月 1日 土曜日

新しい季節の始まりは、なんだかわくわくしませんか?

しかし気持ちとは裏腹に、体調を崩しやすいのもまた、季節の変わり目の特徴。

 

病院にかかるほどではないけれど、なんとなく調子が悪い。そんな時の選択肢に、以前より手に取りやすくなった漢方薬。

今日は、漢方薬の成分である生薬にまつわるおはなしです。

漢方とは、古来中国から伝わり、日本の風土や気候、日本人の体質などにあわせて独自に発展してきた日本の伝統医学です。

  

西洋薬は有効成分を化学的に合成した単一成分製剤が基本です。
一つの症状に対して一剤を投与します。

 

それに対して漢方薬は、独自の有効成分を持つ複数の生薬を組み合わせて作られた多成分製剤です。
そのため、複数の症状に対して一剤で対応できるケースもあります。

生薬とは、植物動物鉱物などの中で薬効があるとされる一部分を加工した天然由来の薬のことです。現在認可されている医療用漢方製剤として使用されているものや、かつて使用されていた生薬の一部をご紹介します。

 

植物由来のもの

防已(ボウイ)「オオツヅラフジ」の茎(つる性の茎、根茎)で、「シノメニン」というアルカロイドを含みます。やや苦味があり、手足のむくみやしびれ、関節の痛み(リウマチ)などに効果があります

 

当帰(トウキ)セリ科の植物である「トウキ」や「ホッカイトウキ」の根を湯通ししたものです。

貧血や冷え、自律神経の乱れ、生理不順など、女性に多くみられる症状に効果を示します。

 

動物由来のもの

熊胆(ユウタン)ヒグマまたはその近縁の動物の胆汁を乾燥させたもので、胃腸の調子を整える働きを持ちます。

 

麝香(ジャコウ)アジア大陸の山岳地帯に生息する「ジャコウジカ」の雄が持つ、「麝香嚢(じゃこうのう)」という器官から分泌される物質を乾燥させたものです。古くから香料としても使用されてきました。心臓の働きや精神(神経)を整える作用を持ちます。
かつては日本薬局方に掲載されていましたが、乱獲により絶滅の恐れがあることから削除されました。

 

鉱物由来のもの

牡蛎(ボレイ)マガキの貝殻の表面をよく削り、天日にさらした(または高温で焼いた)のちに、砕いて粉にします。

主成分は「炭酸カルシウム」で、精神を安定させる鎮静効果や、胃の調子を整える制酸効果などがあります。

 

石膏(セッコウ)薬として用いられるのは、細かい繊維状の結晶を持つ「繊維状石膏(軟石膏)」です。主成分は「硫酸カルシウム」で、熱を下げる、口のかわきを改善するなどの薬効を持ちます。

 

漢方薬の名前は主に、配合される生薬に由来します。
例えば「葛根湯」は、メインとなる生薬である“葛根”が名前になった例で、「当帰芍薬散」は、構成する生薬の“当帰”“芍薬”の名前を連ねたものです。

 

名前の最後にある“散”“湯”剤形を表しています。現在の医療の場では主に、生薬を煎じた液を乾燥させて得られるエキスを顆粒状にしたエキス製剤が使用されています。手間がかからない、携帯しやすい、保存が容易など、患者さんにとって多くのメリットがあります。

 

新しい季節、体調を整えて気持ちよく過ごしたいですね。

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