残薬のおはなし

2017年 9月 1日 金曜日

“残薬”というのは医師から処方された薬を飲み残したり飲み忘れたりして余った薬のことです。

実はこの残薬、治療が狙い通りに進まないリスクだけでなく、医療費のムダにもつながるため、医療財政にも影響し、社会的にも問題になっています。

しかしながら、飲み忘れてしまったり、急な外出でお薬が手元になかったりと、様々な理由でどうしても残薬が発生してしまう事情があると思います。また、ポリファーマシーといった、多剤併用・多剤処方により、飲み方が複雑になり、決まり通りに服用するのが難しいといった状況も予想できます。

(ポリファーマシーは、臨床的に必要以上のお薬が投与されている、あるいは不必要なお薬が処方されている状態で、併用するお薬が何剤以上でポリファーマシーであるという明確な定義はありません)

 

では、たまってしまったお薬はどうしたらよいでしょうか?

そんなときは、かかりつけの薬剤師さんに相談してみるのもひとつの手段です!

医師と連携し、処方日数の調整を行ってくれることもあるかと思います。

また、病院で診察してもらう際に、医師に残薬があることを伝え、その段階で先生に処方日数について相談していただくことでも調整可能です。また、お薬手帳を活用することで、医師や薬剤師に薬の情報を正確に伝えることができます。

お薬は無料でもらえるものではありません。保険診療であっても、自己負担額のほかに、国や地方の「税金」や国民保険組合・健康保険組合等の「保険料」でまかなわれています。医療費が年々増え続けていけば、少子高齢化が進む日本で、国民健康保険制度を維持していくことは困難になっていくと予想されます。

医療従事者・患者様おひとりおひとりが意識してくことで、この残薬の状況が改善していくことを望みます。

なお、医療現場でもポリファーマシー対策へのさまざまな取り組みや議論・検討がなされていることと思いますので、患者様おひとりおひとりの生活の質が向上するよう、より一層実践されていくことを期待しています。

金属アレルギーのおはなし

2017年 8月 15日 火曜日

『アレルギー』と言ってもその種類は様々で、代表的なものとしては花粉症、食物アレルギー、薬物アレルギーなどがあります。

また、その他にもたくさんのアレルギーがありますが、今日は『金属アレルギー』についておはなしをしたいと思います。

 

『金属アレルギー』とは金属に対するアレルギー反応によって起こる「アレルギー性接触皮膚炎」です。

アクセサリーを付けていた部分にブツブツやかゆみが出たという経験はないでしょうか。

これが『金属アレルギー』と言われるものです。

アクセサリーや時計といった金属製品を身につけているうちに、汗で金属が少しずつ溶け出し、溶け出した金属が体内に入り込み、体内に入った金属が免疫反応によって『異物』と判別され、ブツブツやかゆみなどの症状が起こります。

金属アレルギーの症状は金属が直接皮膚に触れることで皮膚症状が起こる『金属接触アレルギー』だけではなく、直接皮膚に触れている部分から離れた場所または全身に症状が表れる『全身型金属アレルギー』もあり、どちらの症状がでるかは人によって異なります。

また、アレルギー発症までの期間も人によって異なり、原因となる金属を身に付けてから数日で発症する人もいれば、数年経ってから発症する人もいます。

 

症状が軽い場合、原因となったアクセサリーなどに触れないようにすれば数日で治まりますが、ブツブツやかゆみがある症状がひどい場合には早めに皮膚科を受診し適切な治療を受けましょう。

治療は症状に応じて、非ステロイド性抗炎症外用剤やステロイド外用剤などが用いられます。かゆみがひどいときには内服の抗ヒスタミン剤を併用したりもします。

 

金属アレルギーは金属製品を身に付ける人であれば誰にでも起こりうるアレルギーと言え、また、どの金属も原因になる可能性があるので、「この金属は絶対大丈夫!」ということはできません。

そこで、以下のような予防方法で日常から注意をしましょう。

・着用する金属製品はアレルギーの起きにくい金属(チタン、銀、プラチナ、金、亜鉛など)を選び、アレルギーの起きやすい金属(水銀、ニッケル、コバルト、スズ、パラジウムなど)が含まれているものは避ける。

・汗を多くかく時(春夏などの時期やスポーツをするとき)は、金属製品をはずしできるだけ金属に触れないようにする。

 

ちなみに、歯の治療で使用した詰め物が原因で金属アレルギーが発症するということもあります。これまでに歯の治療を行い詰め物をしているという方は、歯科金属が溶け出さないようにするために、口内を清潔に保ち予防を心がけましょう。

ゆっくり効く薬のおはなし

2017年 8月 1日 火曜日

徐放錠(徐放性製剤)という言葉を皆さんはご存知ですか?

今回は小さな錠剤の中に、ビックリするような工夫をしている薬の話です。

 

その前に、まずは口から飲み込んだ薬(今回は錠剤とします)が身体の中でどうやって効き目を発揮するかについて説明したいと思います。

一般的な錠剤は主薬(有効成分)と添加物を混ぜた後、粉末状の材料に圧力をかけて形成し、皆さんよくご存知の錠剤として生まれ変わります。

口から飲み込まれた錠剤は、例外もありますが胃で崩壊(水分が錠剤に浸透することで形が崩れます)し、溶け出した有効成分が小腸から吸収されて肝臓まで到達します。

そこから体内の血流にのって、身体の各組織(患部)に辿り着いたのちに期待された効果を発揮します。

それに対して徐放錠は、溶け出す有効成分の量をコントロールすることで血流にのっている薬の量(血中濃度)をより長く一定に保つことができます。

これは何でもないことのように思えますが―――

・治療に必要な血中濃度を維持できる時間が長い

→薬の服用回数を減らせる

・血中濃度を一定に保ちやすい

→濃度が上がりすぎることによる副作用のリスク、飲み忘れなどで濃度が下がりすぎた場合の効果低下のリスクの軽減

といったメリットが期待できます。

 

ちなみにこの徐放錠、内部の構造は錠剤の種類によって様々です。

・ゆっくり溶け出す錠剤を早く溶ける錠剤で覆う(ロンタブ型)

・それぞれ溶けるスピードが異なる有効成分の顆粒を、複数一緒に固めて錠剤にする(スパスタブ型)

・特殊な材料の中に有効成分を散りばめ、ゆっくり溶け出すようにする(ワックスマトリックス型)

…などなど

上で紹介した以外の内部構造を持つ徐放錠もたくさん開発され、医療現場で使用されています。

 

徐放錠の素材によっては体内で消化されず、便と一緒に排泄されてしまうタイプもあります。

これはゴーストタブレットと呼ばれる徐放錠の抜け殻のようなものです。

決して副作用やご自身の身体の異常ではないですし、激しい下痢などがなければ有効成分もきちんと体内に吸収されているので安心してください。

逆に「薬がそのまま体の外に出てきている!」と不安になって徐放錠を噛み砕いたり、潰して服用したりすると一気に有効成分が身体に吸収されてしまい大変危険です。

 

ご自身の服用されている薬が徐放錠なのか、そうでないのか気になったら、かかりつけの医師か薬剤師に質問してみましょう。

指先ほどの大きさの錠剤にも、服用する人のことを考えた工夫がつめこまれているのですね!

 

参考

日本臨床薬理学会 薬の質問箱:https://www.jscpt.jp/ippan/kusuri/index.html

日本薬剤師会 調剤指針