セルフメディケーション税制について

2017年 6月 1日 木曜日

みなさんは『セルフメディケーション税制』という言葉を聞いたことがありますか。

『セルフメディケーション税制』は、2017年1月1日から始まった、新しい医療費控除制度です。

 

従来の医療費控除制度は、1年間に自己負担した医療費が、自分と扶養家族の分を合わせて「合計10万円」を超えた場合に、所得税が一部還付されたり、翌年の住民税が減額されたりする制度です。セルフメディケーション税制では、治療のためにドラッグストアなどで購入したOTC医薬品(一般用医薬品)の代金もこの医療費控除制度の対象となります。従来の医療費控除制度は、1年間に合計10万円の医療費がかからなければ医療費控除に該当しなかったところ、今回の『セルフメディケーション税制』では、特定の成分を含んだOTC医薬品の年間購入額が「合計1万2,000」を超えた場合に適用されます。

ただし、セルフメディケーション税制を利用するには、対象となる医薬品、対象となる人に条件があります。

《対象となる医薬品》

対象医薬品は約1,500品目あります。対象製品は厚生労働省のHPでご覧いただける他、製造メーカーの自主的な取り組みにより、パッケージに識別マークの印刷やシールが貼られています。医師の処方せんが必要な医療用医薬品から、OTC医薬品に転用された、いわゆるスイッチOTC医薬品と呼ばれるものが対象となっています。

《対象となる人》

所得税や住民税を納めている人で、適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、①特定健康診査(いわゆるメタボ健診)、②予防接種、③定期健康診断(事業主健診)、④健康診査、⑤がん検診のいずれかを受けている人です。

 

この制度を利用するためには、通常の確定申告に必要な書類の他、対象となるOTC医薬品を購入した際のレシート、定期健康診断を受けたことを証明する書類(領収書、結果通知書など)の提出が必要となります。レシートには、この制度の対象製品に★などの印と「セルフメディケーション税制対象」と記載があるので、レシートや領収書はこまめに保管するくせをつけると良いでしょう。

参)セルフメディケーション税制普及・啓発用チラシ(OTC医薬品協会HPより)、セルフメディケーション税制Q&A(厚生労働省)

味覚のおはなし

2017年 5月 15日 月曜日

近年、味蕾地図が否定されているのはご存知でしょうか。

味蕾地図というのは、舌先では甘味、舌の根では苦味、横では酸味や塩味を感じる、と言われているものです。

ヒトが味覚を感じることには、味を楽しむこと以外に意味があります。

だからこそ、舌の場所によって味の感じ方が大きく違ってはいけないのです。

味覚には、基本五味と呼ばれる5つの味があります。甘味、うま味、塩味、苦味、酸味の5つです。

この基本五味は、ヒトが好みやすい味と不快に思いやすい味に分けられ、前者は、甘味、うま味、塩味の3つ、後者は苦味、酸味の2つです。

なぜ、好みやすいかというと、ヒトが生理的に必要とする成分を示す味だからです。

甘味はエネルギー源となる糖質、うま味はグルタミン酸のようにタンパク源となるアミノ酸、塩味はナトリウムなどのミネラルをそれぞれ示します。

逆に、ヒトが不快に思いやすい味は体内に取り込むのを避けたい成分を示す味になります。

一般的に苦味は毒物の味、酸味は腐敗したものの味であると言われています。

 

このように、ヒトが体内に取り込むべきものか、取り込んではいけないものかを判断するためにも、味覚は重要な手段の一つなのです。

 

基本五味以外にも味はあります。例えば、唐辛子の辛味、もう一つのエネルギー源である脂質味、メントールの涼味なども存在すると言われています。これらの味がなぜ基本味に含まれないのかというと、基本五味の情報を脳に伝える際に使われる味神経が使われないからです。例えば、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンは、温感を脳に伝える神経を介して脳に情報伝達されます。辛い料理を食べると体が温まるのは、温感と同じように脳に伝わるためだと言われています。

 

ここまで述べたように、味覚というのは楽しむためのものだけてはなく、身体に必要なものかどうか認識するための手段でもあります。近年は糖尿病や高血圧などの生活習慣病も問題になっているので、味覚を通して、好きな味のものだけに偏らないようにすることや、食べ過ぎないことを意識してみてはいかがでしょうか。

天然物からの医薬品開発のおはなし

2017年 5月 1日 月曜日

突然ですが「アスピリン」という医薬品をご存知でしょうか。これは解熱鎮痛剤として風邪薬に用いられるくすりで、皆さんも1度はお世話になったことがあるかと思います。実はこのくすり、日本人にも身近でなじみのあるヤナギから採れたサリチル酸をもとに創られたものです。

薬と聞くと合成したものというイメージが強いかもしれませんが、自然に存在する天然物を起源としたものも多いのです。今日は天然物と医薬品開発についてのお話しを致します。

植物は、動物とは異なり動くことができないため、与えられた環境で生き延びるしかありません。そこで植物はあらゆる化学反応を駆使し、多岐にわたる化合物を生み出すことで生命活動を維持しようとします。そのために植物から得られた天然物には生理活性に富んだものが多く、医薬品として多く利用されてきました。

例えば、植物からつくられた有名な抗がん剤として、

・ニチニチソウから抽出された【ビンブラスチン】

・タイヘイヨウイチイから抽出された【パクリタキセル】

・喜樹(キジュ)に含まれるカンプトテシンの構造を基に創られた【イリノテカン】などがあります。

他にも、近年ではクソニンジンから見つけられた抗マラリア薬の【アルテミシニン】は、2015年のノーベル生理学・医学賞で注目されました。

このように現在の医療に欠かせない多くの医薬品が天然物をルーツとして創られています。実際、市場に出された医薬品のうち5割以上が自然に存在している天然物をもとに開発されたものだそうです*1

その一方で、天然物からくすりを創りだすには課題も様々あり、効率性という点では合成物の方が優れているイメージがあります。しかしながら、自然には、未知なる医薬品の資源として未だ手付かずの天然物が残っています。そして多くの天然物は、合成技術だけでは創造できないような多彩で複雑な構造を持つため、大いなる可能性を秘めています。今後も天然物は人々の健康に貢献できる創薬資源として期待できます。

 

私たちは過去もこれからも、自然から多大なる恵みを受けつづけていくことに違いありません。

 

参考資料

1) D. J. Newman & G. M. Cragg: J. Nat. Prod., 75, 311

(2012).

2)創薬科学入門─薬はどのようにつくられる?

3)化学と生物 Vol. 54, No. 1, 2016