運転とくすりのはなし

2016年 9月 2日 金曜日

毎日暑い日が続いておりますがいかがお過ごしでしょうか。みなさんの中にはこの夏、車でどこかにドライブに行かれたり、運転して帰省をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は車の運転と薬にまつわるお話をさせていただきたいと思います。

 

私たちが車を運転するうえで守らなくてはいけない法律の一つに道路交通法があります。この法律では「過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。」(第66条 一部省略)と規定されています。つまり体が疲れた状態であったり病気や薬を服用していることによって運転に何らかの影響を及ぼす恐れがある場合は運転をしてはならないということです。そして普段みなさんが服用している薬の中にも運転に注意が必要なものが含まれているかもしれません。そこで、運転への注意が必要な薬について一部ですが例を挙げてご紹介したいと思います。

00593-450x337

 

 

 

 

 

 

 

みなさんが薬局やドラックストアで購入することができる薬(一般用医薬品)の中に、風邪薬や鼻炎・花粉症に対する抗アレルギー薬がありますが、これらの多くには抗ヒスタミン作用といって鼻水やくしゃみを抑える作用を持つ成分が含まれています。この抗ヒスタミン作用はアレルギー症状を抑える一方で眠気等を引き起こす危険性があります。また、眠気がなくても集中力や注意力が低下することがあります。

これらの一部の薬では使用上の注意として「服用後、乗り物または機械類の運転操作をしないでください」と記載があります。

また乗り物の酔い止めの薬でも、吐き気やめまいを抑える一方で眠気を引き起こしてしまう作用があるため服用後の乗り物、機械類の運転操作が禁止されています。

 

これらは運転を禁止あるいは注意を必要とする薬のうちのほんの一部分であるため、ご自身が服用される薬について使用上の注意をご確認の上、運転への影響が心配である場合はおかかりの医師・薬剤師に相談してください。特に病院で医師から処方される薬(医療用医薬品)ではたくさんの種類の薬があり、注意が必要な薬については医師・薬剤師からの説明・指導がされるようになっているためご不明な点などは相談してください。

また今回取り上げたお薬の影響以外にも、病状によって運転への注意が必要な場合がありますので主治医の先生の指示に従ってください。

car_driving_woman

麻酔薬を開発した人のはなし

2016年 8月 15日 月曜日

みなさんは華岡青洲(はなおか せいしゅう)をご存知ですか?

華岡青洲は和歌山県出身の外科医です。

麻酔薬を開発し、世界で初めて全身麻酔による乳がん手術を成功させました。

free-illustration-doctor-gekai-irasutoya

麻酔薬とは、「痛い」と感じる感覚を一時的に取り除くことができる薬です。

麻酔薬がなかったころは、患者は痛みを我慢しながら手術を受けるしかありませんでした。

 

華岡青洲は研究を重ねた結果「通仙散(つうせんさん)」を開発し、1804年に通仙散を使って世界初の全身麻酔による手術を成功させました。

 

通仙散の主な材料は植物の毒です。

「マンダラゲ(曼陀羅華)」(別名:チョウセンアサガオ)という植物を中心に、「トリカブト」など数種類の植物を調合して作られました。「マンダラゲ」には、人間の体をしびれさせる毒があります。その毒を利用して、痛みの感覚をなくすことで手術を行うことができました。

 

当時、乳がんは一度かかると治らない病気といわれ、華岡青洲も妹を乳がんで亡くしていました。そのため華岡青洲は「乳がんの手術を成功させたい」という思いが強かったようです。

 

今では、目の病気は眼科、骨折は整形外科というように病院の診療科は細かく分かれていますが、当時はそのような区別はありませんでした。華岡青洲はあらゆる病気や怪我を診察し治療や手術をおこない、たくさんの治療道具や手術道具を開発しました。麻酔薬の通仙散を使用した手術例は100種類を超えていたといわれていmedical_zenshin_masuiます。

 

華岡青洲は、たくさんの人たちを病気や怪我の苦しみから救った天才医師だったのです。

 

手術を受けるとき、麻酔薬がなかったら・・・と想像するだけでも怖いです。華岡青洲のような偉人のおかげで、わたしたちは安心して手術を受けることができるのですね。

 

参考:華岡青洲顕彰施設 青洲の里へようこそ!(http://seishu.sakura.ne.jp/)

製薬協のホームページ(http://www.jpma.or.jp/)

 

 

ウイルスと地球温暖化のおはなし

2016年 8月 1日 月曜日

ヒトは昔から、今もなおウイルスに苦しめられています。天然痘、スペイン風邪、小児麻痺、最近ではSARS、鳥インフルエンザ、エボラ出血熱など、非常に多くの病気がウイルスにより引き起こされています。

infuru5

 

ヒトはウイルスとの戦いに際し、ワクチンの開発によって一部のウイルスを撲滅させることに成功しました。約200年前、英国の医師エドワード・ジェンナーは牛の病気である牛痘のウイルスをヒトに接種することにより、天然痘に感染しなくなるという方法を発見しました。この方法が普及し、1980年WHOは天然痘の世界根絶宣言を行いました。ちなみに、ワクチンという言葉は、ジェンナーの偉業に敬意を表し、その種痘法発見のもとになった、雌牛を意味するラテン語のVeccaから命名されたと言われています。

l_156

さて、不幸にもウイルスによって命を絶たれた人の中には、アラスカなどの永久凍土に埋葬された人もいるようです。事実、スウェーデンの医師、ヨハン・ハルティンは1997年、永久凍土に眠る腐乱のない遺体から、スペイン風邪のウイルスを、ほぼ完全な状態で回収したのです。そのウイルスは2005年、米国のJ.K.タウベンバーガーらによって遺伝子を解読され、再合成されました。

 

現在、地球温暖化の問題がとりざたされていますが、なかなか成果が得られていない状況です。もし、このまま温暖化が進行し続けたとしたら、天然痘をはじめ、種々のウイルスが再び蘇ってしまう、などということも否定はできません。また、スペイン風邪などの様々なウイルスが同時に出現し、鳥、豚などの「種の壁」を経て、想定外に変異したウイルスがヒトを攻撃するようになるかもしれません。

 

そのようなウイルスによってパンデミックが引き起こされないことを、心より祈っております。