痛風発作の予防について

2022年 2月 1日 火曜日

調剤薬局で働いていた時に何度も出会った患者様のお話です。

 

特徴・・・男性・スリッパでの受診・歩くのが辛そう・数ヶ月前にも同じ症状で受診歴がある

 

痛風発作を起こされた患者様です。

 

血液中の尿酸値が高い状態が続き、結晶化した尿酸塩が関節内面に沈着することで炎症を起こした状態を「痛風発作」と言います。

ある日突然足の親指の付け根が腫れ上がり、激痛がおこります。発作は数日間で治まることが多いのですが、何回もくり返すと関節や骨が変型してきます。また、尿酸値が高い状態が続くと関節の痛み以外にも腎臓の機能障害・動脈硬化・尿路結石や生命を脅かす心筋梗塞や脳血管障害などの病気を引き起こす可能性があります。

尿酸値の高い方(目安:血清尿酸値が7.0mg/dL以上)は、普段から薬の服用を続け、飲食物に気を付けておかなければいけません。

 

しかし、尿酸値が高い状態は自覚症状がありません。

痛風発作を起こしてからしばらくはきちんとお薬を服用される方も、しばらく経つと病院に通うのを止めてしまい・・・また忘れたころにあの痛みがやってくるのです。

病院でもらったお薬は自分の判断で中止したり量の変更をしたりしないようにしましょう。

 

最後に、日常生活で注意できるポイントをお話しします。

・食生活の改善

尿酸値を上げると考えられるもの:アルコール・プリン体を多く含むもの(肉類・魚類など)・果糖(ジュースなど)

総カロリーにも注意。バランスの良い食事を心がけましょう。

水分の摂取も忘れずに。

・肥満の解消

・軽い運動

極端に激しい運動は血清尿酸値を上げることがあります。

・気温の変化やストレスに注意

あの痛みにもう二度と出会わないために、お仕事でお忙しい方も、受診・服用・生活習慣改善で高尿酸血症の治療を続けて下さいね。

しもやけについて

2022年 1月 15日 土曜日

寒さが厳しくなってきました。

寒波が来ると、その影響は私の指先に如実に表れます。しもやけです。

今時、しもやけになんてなる人いるの?と思われる方もいるかもしれませんが、我が家の近所の皮膚科にも、冬になると、しもやけの患者さんが何人もいらっしゃっているようです。

今日は、しもやけについてお話します。

 

しもやけとは、寒暖差によって血行が悪くなり炎症を起こす疾患です。痛みや痒みを伴いながら赤紫色の皮疹ができます。

 

★しもやけ予防には・・

①体を冷やさないよう「保温」が大切です。

防寒対策

身体を温める食べ物を摂る、温かい飲み物を飲む

ゆっくり入浴する

②汗をかいてそのままにしたり、手足を濡れたままにすると、水分が蒸発するときに冷えてしまいます。その温度差がしもやけの原因にもなるため、こまめに拭きましょう。

③末梢の血流が悪くなってしまうので、靴下や靴はしめつけのないものを選びましょう。

マッサージをして血行を良くすることも大切です。

 

★しもやけを改善するために、よく使用される薬

血行を良くする薬

・ビタミンEの内服や塗り薬

・ヘパリン含有軟膏

・漢方薬 「温経湯」「四物湯」「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」「五積散」など

炎症を抑える薬

・ステロイドを含むもの

・抗炎症成分を含むもの

痒みを抑える薬

・鎮痒成分を含むもの

・抗ヒスタミン成分を含むもの

その他、キズに対して、抗生剤の塗り薬が使われることもあります。

 

しもやけの状態に合わせて、薬や治療内容は変わってきます。また、赤く腫れあがる、赤く変色する、出血や水ぶくれの症状がみられる場合には、皮膚科の受診をお勧めします。

万全の対策と、最適な治療で、この寒い冬を頑張って乗り切りましょう♪

アルコールにまつわるお話

2022年 1月 1日 土曜日

明けましておめでとうございます。

年が明け、新年会の準備を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここで活躍するのがアルコール!!

個人的には度数14ぐらいで赤褐色になったのが好きなのですが・・・これからお話しするのはアルコールはアルコールでも医薬品のアルコールについてです。

 

 

アルコールと手指消毒

 

というわけで、今やどこのお店にも、ご家庭にもあるおなじみとなったアルコール消毒剤と手指消毒についてお話していきます。

ポンプ式になっていてワンプッシュすれば適量が出て手全体に塗り広げるのが基本です。

手で押すタイプや足でペダルを踏むタイプはシッカリと押し(踏み)さえすれば、およそ3mL出るはずです。

3mLあれば、手全体に塗り広げることができます。

手指消毒で薬液の量と効果を比較した試験では、3mLあれば十分に効果があり、2mL、1mLと少なくなるにつれて効果が減少(消毒が不十分)していることが、報告されています。

では3mLがどのくらいかというと、手の平を窪めてもこぼれそうになるぐらいなので相当多く感じるはずです。

電動の機械では明らかに少ないものもありますので、面倒でも2回、3回噴霧させて消毒してください。

 

 

アルコールとエタノールと酒税のお話

 

医療の現場で消毒用アルコールというと日本ではエタノールを指すことが多いです。欧米ではイソプロパノールが主流ですので、海外の方と話しをするとき、文献を読むときはご注意を。

海外でイソプロパノールが使われているのは、飲料できるエタノールは食料に回すことができることやコストの問題が多いと聞いています。

日本でも飲用できるエタノールには酒税がかかります。

局方エタノールの効能は消毒等となっています。消毒は外用扱いで内服ではないのですが、エリキシル剤の調剤にも使うので内服することもあります。

 

ここで、問題です。

医薬品のエタノールには酒税がかかるのでしょうか?

  • 飲用できるのでかかる
  • 効能が外用なのでかからない
  • 医薬品なのでかからない

 

答えはで酒税はかかっていません。

 

酒税のかからないイソプロパノールと比較するとエタノールは倍ぐらいするのにと思われる方もいらっしゃると思います。でも国税局に確認すると『医薬品に使われるエタノールには酒税はかかっていません。』と返ってきます。ただし、あくまでも酒税という名目ではなくて、原料として購入する際に酒税相当分として購入価格に上乗せされています。何か騙された気分ですが・・・

そこでメーカーも考えました。

飲用ではなく消毒に使うのだから、エタノールに添加物を加えて飲用不可にすれば、酒税相当額分を下げることができるのではないかと。これを『変性アルコール』といいます。

その結果、現在、売られているアルコール含有手指消毒剤の多くは『変性アルコール』にして価格を抑えています。

ちなみにピュアなエタノールの消毒用エタノールや局方エタノールのほうが同じ濃度のエタノールを使っている(より手間かかっていそうな添加物が入っている)手指消毒剤より高いのは今述べたことが理由です。

 

 

液とゲル

 

アルコール手指消毒剤には液タイプゲルタイプがあります。

どちらがよく効くのでしょうか。

結論から言うと同じです。

要は使い勝手の良いのを使ってください。

下記に両剤の特徴を簡単に記します。

・液タイプにはクロルヘキシジンなどの殺菌剤が添加されていることが多く、持続効果が期待されます。また、乾燥後がさらっとしている(中には保湿剤がべたつく製品もありますが)などがあります。ただ、手からこぼれやすく床が汚れるといったデメリットもあります。

・ゲルタイプは消毒剤が垂れにくいといった特徴があります。このため手全体に塗り広げやすいといわれています。1回の量も液タイプより少なくて済みます。デメリットとしてはゲル化剤が皮膚表面に残留するので医療従事者の方のように1日に何回も使用すると表面に膜を張ったようになって効果が落ちてくる(石鹼で洗い落とせばよいのですが)といったデメリットがあります。

 

 

エタノールの濃度の謎?

 

一般に消毒用エタノールは70%と言われています。医薬品でいえば76.9~81.4vol% (100mL中83mL)の濃度になります。この違いは?

70%というのは重量%です。76.9~81.4vol%は容量%です。したがって、エタノールの比重(温度によっても変化します)で換算するとどちらも同じものです。

 

 

コロナが流行して消毒用のエタノールが不足したのは記憶に新しいところです。

実際には、原料のエタノールは不足していなくて、製品を生産する工場のキャパシティを超えた需要によって不足したのでした。とにかく平常の10倍以上の注文が殺到したので、仮に休日返上、24時間稼働しても追いつかなかったと想像がつくと思います。