調剤薬局のはなし

2021年 9月 15日 水曜日

「今回はどうされましたか?」

調剤薬局で聞かれるのはなぜだろうと不思議に思われたことはありませんか?

 

調剤薬局で働いていた時、

「病院で診てもらったのに何で薬局は病名などわからないの?」

「また一から症状伝えないといけないの?」

このように患者さんからよく言われました。

 

私自身薬剤師になるまでは患者として同じ疑問を持っていたのでお気持ちは非常によくわかります。

 

実は・・・

調剤薬局では病院のカルテを見ることはできません。

処方箋には病名や症状も書かれていません。

(処方箋に載っているのは、

患者の氏名、年齢、性別、薬の名前とその用法、用量、処方せんを発行した医師と病院名、処方箋が発行された日付です。検査値については最近載せてくれるものも増えてきましたが、まだまだ少ないです)

 

ですので、処方箋だけだと薬剤師は

(この薬が耳鼻科から処方されてるから病名はこれかな・・・)

(この年齢だと体重はこのくらいだろうからこの量は適切だろうな・・・)

と推測することが非常に多いのです。

推測だらけだと患者さんにあった薬をお渡しできるかの判断がとても難しいのです。

 

ということで、調剤薬局で

病院でも同じことを聞かれたであろうという質問を再び患者さんに聞き、

病院とは別に問診を記入していただき、

さらにお薬手帳を持ってきてください

とお願いしているのです。

 

このように書くとものすごーくめんどくさい存在という感じになってしまいますが、、、

 

調剤薬局で患者さんとお話させていただくことで、

・処方されている薬が体に合わない

・今飲んでいる薬と飲み合わせがよくない、成分が重複している

ということがわかることが結構多いのです。

 

具体的には、

「風邪で短期間しか薬飲まないから大丈夫!」

と思っている方でも、いろいろとお話することで

・前にひどい下痢をしたことのある抗生物質と似た薬が出ている

・タクシー運転手で眠気が出たら困るのに眠気が出る可能性がある総合風邪薬が処方されている

・実は別に受診している歯科から同じ痛み止めと抗生剤が処方されていた

 

・・・などの理由で処方医に薬を変更してもらうということが毎日のようにありました。

 

「病院で長く待たされ、体もしんどいのに、また薬局でも待たされたり色々話すのはしんどい!!」

本当にお気持ちわかります。私もそうです。

 

ですが、

より安全にお薬を服用していただくために、ご自身のお体を守るためにご協力いただけるとありがたく思います。

 

また、ご自身の病気のことや薬のことについて、

「お医者さんに言うの忘れた!聞くの忘れた!聞きにくい!」

そんなことありませんか?すべてにお答えできないこともありますが、お気軽にご相談ください。

 

調剤薬局の薬剤師はしんどい時に色々と聞いてくるめんどくさい人!ではなく、

ご自身の健康を守るための身近なパートナーと考えていただけるとうれしいと思っております。

お薬手帳のおはなし

2021年 9月 1日 水曜日

皆さんは、お薬手帳はお持ちでしょうか?

病院や薬局を利用すると必ずと言って良いほど聞かれると思います。

持っていない方、各施設で作ってしまい何冊も持っている方、持っているが必要性がいまいちわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回はお薬手帳の役割についてお話しします。

医薬品には膨大な数の種類があります。さらに現在はジェネリック医薬品といって同じ成分、同じ効能なのに違う名称で販売されている薬も数多くあります。

複数の病院からそれぞれ薬を処方してもらうと、時々同じ成分の薬や、同じ効能の薬、さらには違う症状に対する薬同士で相性が悪く、一緒に飲んではいけない組み合わせなどが出てくることがあります。このような組み合わせをそのままにしていると、想定以上の効き目が現れたり逆に効き目が現れなかったりといったことが起きてしまいます。

そうならないために、複数の病院で処方された薬をまとめて管理できるのがお薬手帳です。さらに薬の内容だけではなく、アレルギー歴や副作用歴を自分で書けるので、薬物治療をより安全に行うことができます。

また、お薬手帳は災害時にも役立ちます。災害時にはかかりつけの病院にいけるとも限りませんし、電気が止まるとカルテを見ることも困難です。各医療施設へ医薬品を安定供給することもできなくなるため、数少ない薬の中で代わりとなる薬を処方することになります。そんなときにも、お薬手帳があれば既往歴やいつも服用している薬を知ることができます。

災害が多い現代、いつ自分が被災者になるかわかりません。日常の薬剤管理のためだけでなく、災害の備えにもお薬手帳はとても重要なツールです。ぜひ1冊持って頂けたらと思います。

緑内障と治療薬のおはなし

2021年 8月 15日 日曜日

本日は緑内障のおはなしをしたいと思います。

 

緑内障は日本の中途失明の原因として常に上位を占める疾患の一つです。

 

緑内障には開放隅角緑内障閉塞隅角緑内障の2種類があります。日本人に多いのは開放隅角緑内障であり、そのうち正常眼圧緑内障がほとんどを占めると言われています。

 

緑内障治療薬は眼圧を低下させる作用があり、作用機序は房水産生抑制と房水流出促進に分けることができます。ここでは使用されることの多いお薬を取り上げてご紹介していきたいと思います。

 

 

房水産生抑制薬

β受容体遮断薬:チモロール、カルテオロール、ベタキソロールなど。

毛様体に存在するβ2受容体を遮断することで、房水産生を抑制します

薬剤によっては全身性の副作用が発現することがあるため、気管支喘息やコントロール不十分な心不全の患者さんなどには禁忌となっています。

 

炭酸脱水酵素阻害薬:アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミドなど。

毛様体上皮の炭酸脱水酵素を阻害して房水産生を抑制します。

利尿作用があるため、内服薬は就寝前の使用は避けるようにしましょう。

 

 

房水流出促進薬

プロスタグランジン製剤:ラタノプロスト、トラボプロスト、タフルプロストなど。

主にぶどう膜強膜流出路からの房水流出を促進する働きがあります。

長く使用を続けていると眼瞼色素沈着やまつげが濃くなる、虹彩色素沈着などの副作用がでることがあります。点眼後に目の周りに付着した点眼液をしっかりふき取るようにしましょう。

 

 

また緑内障の患者さんには眼圧上昇を起こす薬の使用に注意が必要です。

眼圧を上昇させる薬には、抗コリン薬や抗不安薬、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬などがあります。特にOTC医薬品のかぜ薬には交感神経刺激作用や抗コリン作用を有する成分が配合されていることも多いため、緑内障の患者さんには市販の風邪薬を購入するときには医師や薬剤師に必ず相談するようにお話しておくと安心です。