口内炎のおはなし

2019年 9月 15日 日曜日

がん治療は進歩し、がんは治せる病気へと変わってきていますが、その治療過程では様々な副作用も引き起こし、口の中にも高い頻度で起こります。

本日は、がん薬物療法や放射線療法により認められる、口内炎症状についてご紹介します。

 

口内炎とは

 口の中の粘膜(唇や頬の内側、舌、歯ぐきなど)におきる炎症のことです。

口内炎が悪化すると、痛みで食事が取れなくなったり、粘膜が腫れて痛くなったり、唾液量が減少して口が渇いたり(口腔乾燥)、味覚が変化したり、治療の影響で免疫力が低下して口の中の細菌が全身へ感染を引き起こしたりすることもあります。

 

口内炎を引き起こしやすい治療

  • 頭頸部がん(顔、のど、口、鼻などのがん)や食道がん治療のために放射線照射した場合や抗がん剤治療と併用した場合
  • 造血幹細胞移植で全身放射線照射を併用した場合
  • 口内炎を引き起こしやすい抗がん剤の治療をした場合

 

口内炎の予防法

口内炎の治療には時間がかかり、食事がとりにくくなることで栄養状態が悪化し、生活の質(QOL)が低下することで治療継続が困難になることもあり、治療前からのお口のケアーが大切になってきます。

 

①うがいによる口腔ケアー

うがい液はお口の中を清潔に保ち、湿り気を保つことに役立ち、また炎症を抑えたり組織の修復に役立ったりします。朝起きたとき、食前・食後、寝る前、乾燥や痛みがあるときなどこまめにうがいしましょう。

 

②歯磨き

毎食後、寝る前の歯磨きを習慣に。専門家に磨き方を教えてもらうことも必要です。

 

③保湿

口腔内の乾燥は口内炎の発症や悪化にも影響があるため、保湿剤や市販の口腔内保湿ジェルなどを使うことも有効です。

 

④禁煙

喫煙によって口内炎が悪化する可能性があるため、禁煙を心がけましょう。

 

口内炎の治療方法

口内炎は治療法が確立していないため、症状にあわせた対症療法が主流になっています。

①うがいや口腔ケアー

アズレンスルホン酸ナトリウムなどのうがい液などを使います。痛みが激しい場合は局所麻酔薬を混ぜたり、とろみをつける成分を混ぜたりする場合もあります。

②消炎鎮痛剤

局所麻酔薬を加えたうがいに加えて、鎮痛剤を併用することもあります。鎮痛剤にはいろいろな種類があり、痛みで食事が困難な場合は、食前に痛み止めを飲んだり、痛みを抑える成分の入ったうがい液でうがいをしてから食事をしたりすると痛みは和らぎます。

③粘膜保護

保湿剤を使って粘膜保護したり、唾液の分泌を促す薬を使ったりします。

④食事の工夫

食事の工夫で痛みを和らげることも出来ます。

刺激の少ないもの(薄味のもの、酸味を控える、冷ましたもの、香辛料を控える)、ミキサー食、とろみのついた食事、流動食、経管栄養剤など。

栄養摂取が困難な場合は、中心静脈栄養や胃ろうを検討する場合もあります。

 

ここではがん治療と口内炎についてご紹介しました。

口内炎症状が悪化すると、治療に時間がかかるため、日ごろのケアーが大切になります。

また、歯周病が糖尿病などの生活習慣病とかかわりがあることも知られていて、お口の中を清潔に保つことは生活習慣病の予防にも繋がります。

おいしく食べ物を食べるためにも 定期的に歯科受診し、日ごろの口腔ケアーを心がけましょう。

夏風邪のおはなし

2019年 9月 1日 日曜日

外は暑くて、室内は冷房で寒い…夏風邪をひいてしまった方はいませんか?

 

今回は、ドラッグストアで購入できる、のど風邪にオススメの漢方薬を2種類紹介します!

 

■その1

今や冷房なしには過ごせない日本の夏。

でも、冷房を使うと乾燥で声がカスカスになっちゃう…

そんな時におすすめなのが【麦門冬湯(バクモンドウトウ)です!

 

?こんなとき使う

乾燥して声が枯れている

ケホケホと乾いた咳が出る

乾燥して痰が絡む感じがある

 

?おすすめする人

咳は止めたいが、口が乾いたり 眠くなる薬は使いたくない人

 

?おすすめしない人

痰がたくさんでる人

 

?入手するには

ドラッグストアで購入

病院で処方してもらう

 

【麦門冬(バクモンドウ)】という生薬が肺と喉に潤いを与えてくれます。

肺が潤うことで、乾いた咳や声のかすれ、乾燥による痰を和らげます。

 

潤いを与える薬なので、痰がたくさん出ている時に飲むと 痰がもっと出てしまうかもしれません?その場合はおすすめしません。

 

 

以前文献で、体の中で 声帯に水分が届くのは1番最後 と読んだことがあります。

ということは 声帯からは水分が抜けやすいし、潤いにくいということ。

 

漢方薬の中では 甘味があって飲みやすい味です。

眠くなる成分は入っていませんのでご安心を?

 

 

 

■その2

朝起きたら喉が痛くて 寒気はない、なんて症状の方にオススメの漢方薬は【銀翹散(ぎんぎょうさん)】です。

 

特に 喉からくる風邪のひき始めにぴったりです。

 

?おすすめする人

風邪のひき始めで喉の痛みが強い

寒気はしない

 

?おすすめしない人

寒気がする風邪

 

?入手するには

ドラッグストアで購入

 

 

銀翹散に入っている【金銀花(キンギンカ)】という生薬は頭部の炎症を抑える効果があります。喉の痛みや頭痛に良く効きます。 【連翹(レンギョウ)】には化膿止めの効果もあり 喉が腫れないようにしてくれます。

 

喉の痛みに効く【桔梗(キキョウ)】【甘草(カンゾウ)】も入っています。

 

銀翹散は体を冷やす効果が強いので、寒気がする風邪の場合は悪化させてしまうかもしれません。寒気がする風邪の場合は、葛根湯(カッコントウ)や麻黄湯(マオウトウ)がオススメです。

 

ドラッグストアで粉タイプと液体タイプが売っています。

液体タイプを冷蔵庫で冷やして喉に絡ませて飲む(=ガラガラうがいして飲み込む)のがオススメです。喉の熱をよく冷やしてくれます。

 

粉のままでももちろん効きます。

 

処方せんでもらえる薬ではないので、病院・調剤薬局ではもらえません。

 

味は少し苦味が強いです。連翹が苦いです。【薄荷(ハッカ)】も入っているので飲むとスーッと清涼感も感じられます。

 

 

「風邪かも?」と思ったその日にすぐドラッグストアで購入して薬を飲めば、病院にかかるよりも、お金も時間もかけずに治療できることもあります。

病院に行ったほうがいいか自分で判断がつかない時や、通院中・妊娠中の方は、ドラッグストアで薬剤師か登録販売者に相談してください。相談自体は無料ですのでお気軽に!

 

 

 

お酒の強さのおはなし

2019年 8月 15日 木曜日

皆さんは、お酒は強い方ですか、弱い方ですか?

「お酒が弱い人」と「お酒が強い人」にはどのような違いがあるのでしょうか。

 

お酒の主成分であるエタノールは主にアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)という酵素によりアセトアルデヒドに代謝された後、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)という酵素によって酢酸とアセチルCoAに分解されます。

 

アルコールを分解する過程で生じるアセトアルデヒドは毒性が強く、顔面紅潮、動悸、頭痛、吐き気などを引き起こします。このアセトアルデヒドを速く分解してしまえるかどうかが重要となるのです。

 

アセトアルデヒドを分解する酵素であるALDHには次のような型があります。

・ALDH1 アセトアルデヒドが高濃度にならないと働かないタイプ

ALDH2 アセトアルデヒドが低濃度でも働くタイプ

 

このうち、ALDH2の活性がどれだけ強いかがその人のお酒の強さに関係しています。

活性の強いALDH2の遺伝子型を *1、全く活性のないALDH2の遺伝子型を *2と表します。

これらの遺伝子を両親から一つずつ貰うため、その組み合わせによりALDH2の強さのタイプは以下の3つに分けられます

・*1/*1 高活性型。お酒に強い。

・*1/*2 低活性型。活性の強さは高活性型の1/16。お酒に弱いか、ある程度は飲める。

・*2/*2 無活性型。お酒は全く飲めない。

 

日本人の約40%は低活性型 (*1/*2)、そして約5%は無活性型 (*2/*2) のALDH2を持つと言われています。

つまり、実は日本人の約半分が生まれつきお酒に弱いということなのです。

 

加えて日本人は、活性の強いアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)を持つ人が多いと言われています。

ADHの活性が強いということはエタノールが速く分解されてアセトアルデヒドになるということですから、日本人は「酔いが覚めやすく悪酔いしやすい」民族であるともいえるかもしれません。

 

ちなみに、「訓練すればお酒に強くなる」というのは半分正解で半分不正解です。というのも、お酒を多量に飲み続けることでADHやALDH2以外のアルコール分解酵素の量が増えることがありますが、肝心のADHやALDH2の活性は遺伝で決まっており、変わることはないからです。

 

お酒の強さは生まれつき個人差があることを理解して、自分の体質に応じた飲み方を心掛けることが大切です。