医療費のおはなし

2017年 9月 15日 金曜日

今年の8月、高額療養費制度の改正がありました。

このブログをご覧の皆さまも、ニュースなどで耳にされたことがあるのではないでしょうか。今回はこの話に因んで、日本の医療費の話をしようと思います。

日本の国民医療費は年々増え続け、2013年にはついに年間の医療費の総額が40兆円を突破しました。最新のデータでは、2014年の人口一人当たりの医療費は約32万円です。その中でも65歳以上の医療費は全体の58.6%を占め、1人あたりの医療費は年間約72万円にものぼります。またこの数字は70歳、75歳と年齢が上がるにつれ上昇しており、年齢が上がれば上がるほど医療費が高いことが分かります。65歳未満の医療費は一人当たり約18万円ですので、現在、高齢者の医療費を抑えることが一つの課題になっています。

 

そこで出てきたのが、今回の改正です。

高額療養費制度についてはご存知でしょうか。「ひと月にかかった医療費がある一定の額を超えた場合、その超えた金額を支給する制度」です。

普段病院に行くことがない方からすると縁遠い話かもしれませんが、急な手術や入院などでひと月の医療費が高額になってしまった際には、有難い制度です。

 

例えば、年収400万円、30歳のAさんがいるとします。Aさんが医療費全体(入院時の食費、差額ベッド代別)として100万円/月の治療を受けると、窓口で支払う金額は通常は3割の30万円ですが、高額療養費制度を利用すると87,430円に抑えられます。

 

以下に、制度のポイントをまとめました。

  1. 支給額の計算は70歳以上かどうかや、所得水準により異なる。
  2. 直近の12カ月間に、すでに3回以上高額療養費の支給を受けている場合は、その月の負担上限額がさらに引き下がることがある。
  3. 加入している公的医療保険(健康保険組合など)に、高額療養費の支給申請書を提出または郵送することで支給が受けられる。
  4. 基本的に差額は後払い。高額療養費を申請すると、窓口負担と限度額の差額が加入している公的医療保険から支給されるが、受診した月から少なくとも3カ月程度かかる。
  5. しかし事前に「限度額適用認定証」の交付を受けていると、窓口での支払いが限度額までに抑えられる。(認定証は医療機関ごとに必要)
  6. 2年前までなら遡って申請できる。

 

今年の8月の改正では、70歳以上の方の支給額の計算方法が改正され、ある程度の収入がある方の自己負担額が引き上げられました。また来年8月には、70歳以上の年収区分を細分化し、さらに自己負担額を引き上げる予定となっています。

 

高齢化社会により、今後ますます国民医療費が上がると予想されます。それに伴い、今後も少しずつ国民の自己負担額を増やす流れとなりそうです。

財源には限りがあるので、自己負担額が増えるのはある程度仕方のないこととも言えますが、まずはなるべく医療費を使わない様、国民一人一人が健康への意識を高め、健康寿命を延ばしていくことが医療費抑制の一番の薬かもしれません。

 

参考

財務省HP https://www.mof.go.jp/budget/

厚生労働省国民医療費HP http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/37-21.html

厚生労働省高額療養費制度HP http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html

 

残薬のおはなし

2017年 9月 1日 金曜日

“残薬”というのは医師から処方された薬を飲み残したり飲み忘れたりして余った薬のことです。

実はこの残薬、治療が狙い通りに進まないリスクだけでなく、医療費のムダにもつながるため、医療財政にも影響し、社会的にも問題になっています。

しかしながら、飲み忘れてしまったり、急な外出でお薬が手元になかったりと、様々な理由でどうしても残薬が発生してしまう事情があると思います。また、ポリファーマシーといった、多剤併用・多剤処方により、飲み方が複雑になり、決まり通りに服用するのが難しいといった状況も予想できます。

(ポリファーマシーは、臨床的に必要以上のお薬が投与されている、あるいは不必要なお薬が処方されている状態で、併用するお薬が何剤以上でポリファーマシーであるという明確な定義はありません)

 

では、たまってしまったお薬はどうしたらよいでしょうか?

そんなときは、かかりつけの薬剤師さんに相談してみるのもひとつの手段です!

医師と連携し、処方日数の調整を行ってくれることもあるかと思います。

また、病院で診察してもらう際に、医師に残薬があることを伝え、その段階で先生に処方日数について相談していただくことでも調整可能です。また、お薬手帳を活用することで、医師や薬剤師に薬の情報を正確に伝えることができます。

お薬は無料でもらえるものではありません。保険診療であっても、自己負担額のほかに、国や地方の「税金」や国民保険組合・健康保険組合等の「保険料」でまかなわれています。医療費が年々増え続けていけば、少子高齢化が進む日本で、国民健康保険制度を維持していくことは困難になっていくと予想されます。

医療従事者・患者様おひとりおひとりが意識してくことで、この残薬の状況が改善していくことを望みます。

なお、医療現場でもポリファーマシー対策へのさまざまな取り組みや議論・検討がなされていることと思いますので、患者様おひとりおひとりの生活の質が向上するよう、より一層実践されていくことを期待しています。

金属アレルギーのおはなし

2017年 8月 15日 火曜日

『アレルギー』と言ってもその種類は様々で、代表的なものとしては花粉症、食物アレルギー、薬物アレルギーなどがあります。

また、その他にもたくさんのアレルギーがありますが、今日は『金属アレルギー』についておはなしをしたいと思います。

 

『金属アレルギー』とは金属に対するアレルギー反応によって起こる「アレルギー性接触皮膚炎」です。

アクセサリーを付けていた部分にブツブツやかゆみが出たという経験はないでしょうか。

これが『金属アレルギー』と言われるものです。

アクセサリーや時計といった金属製品を身につけているうちに、汗で金属が少しずつ溶け出し、溶け出した金属が体内に入り込み、体内に入った金属が免疫反応によって『異物』と判別され、ブツブツやかゆみなどの症状が起こります。

金属アレルギーの症状は金属が直接皮膚に触れることで皮膚症状が起こる『金属接触アレルギー』だけではなく、直接皮膚に触れている部分から離れた場所または全身に症状が表れる『全身型金属アレルギー』もあり、どちらの症状がでるかは人によって異なります。

また、アレルギー発症までの期間も人によって異なり、原因となる金属を身に付けてから数日で発症する人もいれば、数年経ってから発症する人もいます。

 

症状が軽い場合、原因となったアクセサリーなどに触れないようにすれば数日で治まりますが、ブツブツやかゆみがある症状がひどい場合には早めに皮膚科を受診し適切な治療を受けましょう。

治療は症状に応じて、非ステロイド性抗炎症外用剤やステロイド外用剤などが用いられます。かゆみがひどいときには内服の抗ヒスタミン剤を併用したりもします。

 

金属アレルギーは金属製品を身に付ける人であれば誰にでも起こりうるアレルギーと言え、また、どの金属も原因になる可能性があるので、「この金属は絶対大丈夫!」ということはできません。

そこで、以下のような予防方法で日常から注意をしましょう。

・着用する金属製品はアレルギーの起きにくい金属(チタン、銀、プラチナ、金、亜鉛など)を選び、アレルギーの起きやすい金属(水銀、ニッケル、コバルト、スズ、パラジウムなど)が含まれているものは避ける。

・汗を多くかく時(春夏などの時期やスポーツをするとき)は、金属製品をはずしできるだけ金属に触れないようにする。

 

ちなみに、歯の治療で使用した詰め物が原因で金属アレルギーが発症するということもあります。これまでに歯の治療を行い詰め物をしているという方は、歯科金属が溶け出さないようにするために、口内を清潔に保ち予防を心がけましょう。