安定性試験のはなし

2015年 6月 1日 月曜日

この仕事を始めてから、安定性試験の情報をよくお伝えするのですが、実際安定性試験とはどのようにして行なわれているか気になったので調べてみました。

安定性試験は、ICH(※1)ガイドラインQ1と安定性試験ガイドラインの改訂について(平成15年6月3日、医薬審発第0603001号)の2つの基準で行なわれています。これらの基準より室温保存の薬剤の場合は、長期保存試験と加速試験の2つの試験を行なわないといけません。

長期保存試験というのは、保存条件を25℃±2℃、60%RH(※2)±5%RHで行い、試験期間が3年以上となっています。また、申請にあたっては、少なくとも12ヶ月間の試験データが必要で、すなわち、製造してから1年は長期保存試験を行なわないと承認申請出来ません。試験の頻度としては、最初の1年は3ヶ月を越えない間隔で、その後は6カ月を越えない間隔で行ないます。

加速試験というのは、保存条件を40℃±2℃、75%RH±5%RHで行い、試験期間が6カ月以上となっています。また、試験の申請にあたっては、少なくとも6ヶ月間の試験データが必要ということで、試験の頻度としては試験開始時を含め4点以上行ないます。6カ月安定であれば、アレニウスの式(ある温度での化学反応の速度を予測する式)を用いて計算することで、使用期限を3年とすることができます。3年以上の使用期限になると長期保存試験になります。

今回は室温保存の製剤を調べましたが、普段お伝えしている安定性試験がこのような基準で行なわれているのを改めて見直すと、普段の対応も変わってきそうです。

参考資料:安定性試験ガイドラインの改訂について(平成15年6月3日、医薬審発第0603001号)

※1:ICH:International Conference on Harmonisatio of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use(日米EU医薬品規制調和国際会議)の略。日・米・EUによる新薬承認審査の基準を国際的に統一し、製薬企業による各種試験の不必要な繰り返しを防いで、よい医薬品をより早く患者のもとへ届けることを目的としています。

※2:RH:Relative Humidity(相対湿度)のこと。ある気温で大気が含むことのできる水蒸気の最大量(飽和水蒸気量)に対する、実際の水蒸気量の測定値をパーセントで表したもの。

脂質異常症のはなし

2015年 5月 15日 金曜日

桜の季節も過ぎ、暑さ感じる陽気も増えてきましたね。本日は、「脂質異常症」というものについてお話します。脂質異常症とは、血液中の脂質(LDLコレステロールや中性脂肪)が多すぎる病態のことです。未治療の場合、増えた脂質が血管内にたまり、動脈硬化になってしまいます。

この時期はお仕事をはじめ、様々なものの節目となる事が多いかと思います。中には、健康診断を受ける方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、労働者の健康診断では、血液中の脂質の値が異常値を示す方が多いと言われています。少し古い情報になりますが、中性脂肪やコレステロールが高い脂質異常症の方は、潜在的な患者さんも含めると2,200万人にものぼるという報告があります。(平成12年厚生労働省循環器疾患基礎調査)

また、脂質異常症の診断基準の1つに「トリグリセリド(中性脂肪)」があります。以前に行われた国民健康・栄養調査では、トリグリセリドだけでみても、異常とされる基準値を上回る人は、以下のように報告されています。
●男性:30代から50代にかけて増加、50代ではおよそ2人に1人が異常値。
●女性:50代から増え始め60代でおよそ3人に1人が異常値。
脂質異常症という言葉を聞いた事が無い方も多いかと思いますが、実は私たちの身近に潜んでいる病態なのかもしれません。

なぜ、脂質異常症になってしまうのか。原因の多くは“食生活”にあると言われています。
LDL(悪玉)コレステロールが高くなる要因としては、
肉や乳製品などの動物性脂肪の多い食品をよく食べる
鶏卵や魚卵、レバーなどコレステロールを多く含む食品をよく食べる
食べすぎによってカロリー過多になってしまう
以上のことが考えられます。

 

 

中性脂肪は、食べすぎ飲みすぎによる慢性的なカロリー過多が1番の原因とされています。
特に、お酒の飲みすぎは中性脂肪を増やしやすいため、注意が必要です。

以上のことから、脂質異常症を予防するためには“食事のコントロール”が必要になります。お肉や甘いものに偏らず、野菜も含めてバランスのよい食事が大切ですね。
(※中性脂肪が高い方は、砂糖に加え、果物などの糖質にも注意が必要です。)

これから行楽シーズンにさしかかり、BBQなど楽しいイベントも増えてくるかと思います。是非、食べすぎには注意して、野菜を取ることを意識して楽しんで下さいね。

参考資料:脂質異常症ホームページへ ようこそ(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/kousi/

みんな大好きショウガのはなし

2015年 5月 1日 金曜日

冷や奴、素麺、生姜焼き、紅生姜、生姜飴・・・薬味にしたり肉や魚の臭みを消したり、甘いものに合わせたり。ショウガを無くして日本の食卓は成り立ちませんよね(?)。それくらいとっても身近にあるショウガですが、何と漢方薬の原料にもなるんです。
ショウガの根茎を乾燥したものを生姜(ショウキョウ)といいます。体を温める作用、発汗作用があり、風邪のひき始めなどに利用されます。吐き気や嘔吐にも効果的であると言われています。「かぜのひきはじめに飲む」でおなじみの葛根湯をはじめとした、多くの漢方製剤で使われています。
また、同じショウガが原料ですが、湯通しまたは蒸して乾燥したものは乾姜(カンキョウ)と呼ばれています。生姜とよく似た作用をもっていますが、乾姜の方がより冷えの症状改善に効果が高いと言われています。その他に健胃、嘔吐、腹痛、下痢などに用いられています。こちらは小青竜湯(「眠くならない花粉症の薬」として飲んでる方が多くいらっしゃるようです)等の漢方製剤に含まれています。
ショウガって、美味しいだけじゃなくてとても役に立つんだなあ、すごいなあ・・・などと色々考えてたら、何だかお腹がすいてきました。これからも、ショウガを日々の献立に積極的に取り入れつつ、バランスのよい食事をとろう!と強く決意しました。