くすりとしてのコーヒーのはなし

2023年 10月 1日 日曜日

私は毎朝コーヒーを飲むのが習慣になっています。
子供の頃から朝が弱く、家族が勧めてくれたことから、このコーヒー習慣が始まりました。
おそらく、私と同じように「朝はコーヒー」という習慣を持つ方は、たくさんいるのではないかと思います。

 

コーヒーは、「嗜好品」と言われています。
つまり、お酒や煙草と同じようなジャンルです。確かにコーヒーの香りを楽しんだり、味を追求して豆や淹れ方にこだわったりする方はたくさんいます。


コーヒーを飲みながら雰囲気の良い喫茶店で過ごす休日の昼、なんていうのも素敵な楽しみですよね。生きるのに必要な栄養がほとんど含まれていないことも、「嗜好品」に分類される理由になっているようです。

そういった飲み方ももちろんあります。しかし、眠気覚ましなどの「効果」を期待してコーヒーを飲んでいる方も、多くいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな人々(これを書いている私もです)は、言ってみればコーヒーを「薬」として捉えている、とも言えます。

今回は、そんな「薬」としてのコーヒーに注目してみたいと思います。

 

 

コーヒーの眠気覚まし効果は、確かなものなのでしょうか?

もちろん、コーヒーは「医薬品」ではありません。「医薬品」ではないので、「効能・効果」もなく、当然処方せんも必要ありません。

しかし、コーヒーの成分である「カフェイン」については、医薬品として販売されているものもあります。一般名は「カフェイン水和物」で、ねむけや倦怠感、一種の頭痛が「効能・効果」として認められています。用法・用量は成人で1回0.1〜0.3gを1日2〜3回、適宜増減、とされています。1回あたりの量は100mg〜300mgと読み替えてもよさそうですね。ほかにも、「無水カフェイン」や「安息香酸ナトリウムカフェイン」などの形で医薬品化されています。

また、市販の痛み止めにも配合されていることがあります。これは、頭痛に効果があることから配合されているようです。私が確認した製品では、1回量として無水カフェイン80mgが配合されていました。

農林水産省が掲示していたデータによれば、コーヒー100mLには、60mgのカフェインが含まれているそうです。コーヒーカップ1杯が約150mLと言われているので、このデータに沿うならば、コーヒー1杯には約90mgのカフェインが含まれていることになります。

この計算通りなら、コーヒー1杯で、医薬品並みの眠気対策や頭痛への効果を期待してもよさそうです。

しかし、もちろんコーヒーに含まれるカフェインの量は、医薬品のように厳密に規定されているわけではありません。それに加えて、コーヒー豆の種類や、淹れ方によっても変わってくることが想像できます。

つらい症状に対しての「薬」としては使えないと思いますが、眠気覚ましとしての効果は認められていると言ってもいいのではないでしょうか。

 

コーヒーはなぜ眠気覚ましになるのでしょうか?

カフェインにはいろいろな作用があるようですが、眠気に効くのは、脳に移行して、中枢神経を刺激することができるからのようです。ドパミンなどといった興奮性の神経伝達物質の放出を抑制するアデノシンと競合するので、興奮性の神経伝達物質の放出が増えて、中枢神経が興奮します。これによって、眠気が覚めるということです。

  

さらに、アデノシンは腎臓の尿細管再吸収を促進する働きもあります。これも競合的に阻害されるので、尿の再吸収が減る、つまり尿が増えるのです。コーヒーには利尿作用があるといわれるのは、これが理由です。

また、脳血管に直接作用して、血管を収縮させる作用もあります。すると脳内を流れる血液の量が減るので、脳血流量が増えている頭痛には効果があるようです。

 

 

コーヒーの副作用というのはあるのでしょうか?

薬には必ず効果とともに副作用があるものです。コーヒーは薬ではありませんが、眠気覚ましや利尿の効果があるならば、副作用もあるはず。医薬品としてのカフェインには、大量投与すると振戦や不整脈が現れる恐れがあることが示されています。

以前、エナジードリンクの大量摂取による死亡事故が報道されたことがありました。エナジードリンクには、コーヒーをはるかに超えるカフェインが意図的に配合されています。こういった事例も、不整脈が原因で死亡に至っているようです。ただ、一般的には、死亡するほどのカフェインを摂取するには、常識を超えた量のコーヒーを飲む必要があります。1日に3~4杯程度であれば、問題ないようです。

また、胃潰瘍の人は、悪化する可能性があるので慎重に投与すること、となっています。これは、胃酸分泌を促進する作用があるからと言われていますが、なぜ胃酸分泌が促進されるのかは、諸説あるようです。胃酸分泌が促進するなら、食後にはちょうどいいような気もしますね。

 

最後に、少しコーヒーの歴史について見てみます。

コーヒーの起源については、いくつかの話が伝わっているようです。しかし、共通しているのは、聖職者がその効能に期待して、儀式のために用いていたということです。それからはしばらく薬として飲まれており、今のような「嗜好品」になるには間があったと言われています。日本に入ってきたときも、元気になるための「薬」として紹介されていたようです。

ところで、日本にはほかにも似たような「食品」があります。それは「茶」です。茶も現在は嗜好品として飲まれているものですが、昔は薬だったと言われています。茶にもコーヒーと同じくらいカフェインが含まれており、抹茶になるとその量はコーヒーを大きく上回ります。

どちらも、西洋医学が発達し、単一の有効成分を服用できるようになった現代では、「医薬品」にはなりませんしかし、かつては薬として重要視されていました。中医学には、「薬食同源」という言葉もあります。単なる「嗜好品」でも、「医薬品」でもなく、不思議な力を秘めた「薬」として見てみると、毎日眠気覚ましに飲んでいるコーヒーもより面白く見えてくるのではないでしょうか。

 

コーヒーにはこれ以外にもたくさん、薬学や医学の観点で見て興味深い事柄が明らかになっています。がんのリスクを下げるという報告や、ポリフェノールの作用などがその例です。まだわかっていないことも多いですが、昔から重要視されてきたものには、やはりそれなりの理由があるのでしょうね。

秋刀魚には大根おろし!

2023年 9月 15日 金曜日

処暑を過ぎても暑さが続いていますが、夜になると秋の虫の声も聴こえるようになってきましたね。

秋の味覚と聞いて、様々な食材が浮かんでくると思いますが、
「秋刀魚」を思い浮かべる方も少なくないと思います。

   

熱々の秋刀魚に大根おろしを添えていただくとより一層おいしくなります。

ところでこの大根おろしですが、秋刀魚と一緒にいただくことで秋刀魚のうまみが引き立つだけではなく、体に嬉しい効果も期待できるのです。

 

 秋刀魚はが乗っているのが旨味でもありますが、胃もたれを起こしてしまう場合もあります。

大根には、ジアスターゼ(炭水化物を分解する酵素)プロテアーゼ(たんぱく質を分解する酵素)リパーゼ(脂肪を分解する酵素)などの消化酵素が含まれていますので、秋刀魚と一緒に召し上がることで秋刀魚の脂による胃もたれを緩和することが期待できます。

また、魚や肉などの焦げた部分には、発がん性が懸念される物質が含まれていますが、アミラーゼはこれらの物質を分解できる酵素でもあります。

 秋刀魚や鯖など青魚にはω-3系脂肪酸であるDHAEPAが多く含まれていることが知られています。DHAやEPAは血液をサラサラにし、中性脂肪やコレステロール値を下げる効果が期待できると言われています。

しかし、このDHAやEPAは酸素により酸化しやすい性質があります。
大根に含まれるビタミンCは強い抗酸化作用(酸化をしにくくする作用)があるため、秋刀魚と一緒に食べることで酸化によるDHAやEPAの劣化を防ぐことができるのです。

今では大衆魚として親しまれている秋刀魚ですが、江戸時代初期までは、その脂の強さからあまり好まれていなかったようです。


しかし、江戸の人口急増や飢餓による食糧危機に直面し、安く手に入るが脂っこい秋刀魚を何とか食べられないか思考を巡らせたところ、天ぷらに大根おろしを添えて食べていたところからヒントを得たようです。

毎年9月~10月に旬を迎える秋刀魚、皆さんも是非大根おろしと一緒に食べてみてください♪

 

秋の花粉症のはなし

2023年 9月 1日 金曜日

花粉症ときくと、スギやヒノキなどが原因で引き起こされる春の花粉症のイメージが強いですが、秋に花粉症になる人もいます。

「毎年秋になるとなぜか鼻水が出てくる!?」という方は、もしかすると秋の花粉症かもしれません。

秋の花粉症の特徴対策について紹介します。

【原因となる花粉】

草本植物由来の花粉がメインです。

スギやヒノキといった木本植物の花粉に比べると飛散距離は数メートルとさほど長くありませんが、身近なところに存在しているため、知らない間に花粉を浴びてしまうおそれがあります。

原因として多いのは以下の植物の花粉です。

・カモガヤ(イネ科)

・ブタクサ(キク科)※日本で初めて報告された花粉症はブタクサ花粉症でした!

・ヨモギ(キク科)

・カナムグラ(アサ科)

【時期】

・花粉が飛散する期間は8月~10月。

・ピークは9月

・地域によってはブタクサの花粉が12月頃まで飛ぶこともあります。

 

【症状】

秋の花粉症の代表的な症状は、春の花粉症と同様、何度も繰り返す「くしゃみ」

透明でサラサラとした「鼻水」、呼吸が苦しい「鼻づまり」の3つです。

【対策】

春の花粉症対策に通ずるものが多いです。

<花粉に近づかない>
・公園や草原のほか、庭の雑草として生えることもあるので、
   写真等で葉の形状などを記憶し、花が咲く前に除草する。

<家に花粉を入れない>
・花粉の付着しにくい素材(綿、ポリエステルなど凹凸の少ない生地)の服を着る。
・帰宅時に玄関前で花粉を払う。

<体内に花粉を入れない>
・マスクや花粉症用ゴーグルを着用する。
・帰宅後に洗顔、うがいをする。
・掃除を徹底する。
・空気清浄機を置く。

<正常な免疫機能を保つ>
・睡眠をよくとる。
・規則正しい生活習慣を身につける。

<鼻の粘膜を正常に保つ>
・飲酒、喫煙を控える。
・風邪をひかない。

 

【最後に】

以上、秋の花粉症について紹介しました。

風邪や通年性アレルギー性鼻炎との鑑別は難しいので、毎年決まった時期に鼻水やくしゃみ、のどの痛みなどの症状が出る人は、病院の受診やアレルギー検査をおすすめします。

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