ノロウイルス感染症についてのはなし

2014年 12月 15日 月曜日

ノロウイルスはヒトに経口感染して、十二指腸から小腸上部で増殖し伝染性の消化器感染症(感染性胃腸炎)を起こします。毒素は分泌せずに十二指腸付近の小腸上皮細胞を脱落させ特有の症状を発生させます。死に至る重篤な例はまれですが、十二指腸潰瘍を併発することもあります。特異的な治療法は確立されていません。感染から発病までの潜伏期間は12時間~72時間(平均1~2日)で、症状が収まった後も便からのウイルスの排出は1~3週間程度続き7週間を越える排出も報告されています。年間を通じて発症しますが、11~3月の発症が多く報告されています。
主な症状は、嘔吐・下痢・発熱で、「お腹の風邪」と呼ばれていました。症状には個人差がありますが、主な症状は、突発的な激しい吐き気や嘔吐、下痢、腹痛、悪寒、38℃程度の発熱で、嘔吐の数時間前から胃に膨満感やもたれを感じる場合もあります。これらの症状は通常、1〜2日で治癒し、後遺症が残ることもありません。ただし、免疫力の低下した老人や乳幼児では長引くことがあり、死亡した例(吐瀉物を喉に詰まらせることによる窒息、誤嚥性肺炎による死亡転帰)も報告されています。また、感染しても発症しないまま終わる場合(不顕性感染)や風邪症候群と同様の症状が現れるのみの場合もあります。一般に「嘔吐、下痢、腹痛を伴う風邪」という表現がありますが、それらが実はノロウイルスによる感染症の可能性も低くはなく(エンテロウイルス等の他の原因もある)、単なる風邪ではない場合があります。これらの人でもウイルスによる感染は成立しており、糞便中にはウイルスが排出されているため、注意が必要です。
治療ですが、ノロウイルスに有効な抗ウイルス薬は存在しないのが現状です。
吐き気の漢方薬ゴレイサンやオウゴントウを使われるドクターもいますが、基本は、家庭において、経口補水液またはスポーツドリンクを人肌に温めてから飲むことが推奨されます。これらが無い場合は0.9%の食塩水(100 mlに食塩0.9gを溶かしたもので、いわゆる生理食塩水)を調製し、人肌に温めて飲むことが推奨されます。電解質を含まない湯冷まし、お茶などは水分の吸収が遅いので推奨できません。

予防は、手洗い・うがいが基本です。消毒液は、次亜塩素酸ナトリウムが効果が高いとされています。

葛根湯の効果的な飲み方のはなし

2014年 12月 1日 月曜日

葛根湯を風邪をひいてから何日間も続けて飲んだり、風邪をひいてから数日経ってから飲まれる方など様々な方がいらっしゃいます。風邪には「葛根湯」と言いますが…「 いつでも 風邪なら葛根湯を飲めば良い 」というのは実は間違いです。

葛根湯を飲んでもいい時期は「風邪の初期限定」。風邪をひいたかな?と思ってから、せいぜい 1~2日目までと覚えておいて下さい。ごくごく風邪の初期にしか効きません。葛根湯は飲むタイミング、そして止めるタイミングが、とっても重要です。タイミングを間違わなければ風邪の特効薬となります。

では、そのタイミングについて。
風邪の初期には、敵であるウイルスを死滅させ追い出すために発熱し体温を上昇させます。熱を逃がさないように、毛穴や汗腺などの外へ繋がる「穴」を閉じ、筋肉を収縮させて体温を上げようと頑張ります。この時 【葛根湯】 など体温を上昇させるサポートメンバーがいると、効率良く体温が上がるため素早く敵を死滅させるコトが出来るというワケです。

しかし、この体温上昇はむやみやたらとどんどん上げて行く訳ではありません。免疫による体温の上昇は、その時に襲ってきた敵が死滅する温度十分ですよね。それ以上は必要ないワケです。なので、身体の免疫機構はその時に侵入してきた敵が死滅するとされる温度まで体温を上げそれ以上は、上げません。そして、『 敵が死滅する温度に達した!! 』と感知すると、クールダウンに入ります。体温を下げ、平熱に戻すワケです。

実はこのクールダウンの働きをするのが【発汗】。汗腺を開き汗を出すと共に、熱を体の外へ放出して体温を下げ調節します。運動した時の発汗と同じですね。運動の時の発汗も体温調節の重要な機能です。筋肉の運動により発生した熱を、汗と共に身体の外に放出することにより体温のバランスを保っているのです。発汗 = これ以上 熱は必要ない!!という体のサイン。つまり、体温を上げるのは  発汗するまでということです。発汗後にさらに熱を加えると、余分な熱が増えてしまい返って体に悪影響を及ぼしますし、その分余分に発汗させてクールダウンしないといけないので余計な機能と体力を消耗してしまいます 。

つまり、葛根湯 を飲んで良いのは 発汗まで。もし、すでに発汗しているのなら葛根湯の出る幕ではありません。また逆に言えば、葛根湯 を飲むときは 【汗が出るまで飲み続ける】 のがポイント。1包飲んでも発汗していなければ、発汗する温度 = 敵が死滅する温度 まで、どんどんサポートしてあげるのが風邪を早く治すコツです。

覚えておいて頂きたいのは
【 葛根湯は汗が出るまで飲み続ける!! 】
【 葛根湯は汗が出たら飲んではダメ !! 】
が大切ということです。

最後に、私の場合は 市販の生姜湯をアツアツで一緒に飲みます。
さらに体が温まるので効果がUPしますよ。

喉にお箸を刺してしまったら?のはなし

2014年 11月 15日 土曜日

小さなお子様のいらっしゃるご家庭では注意していても起こってしまうことがあるかな、と思い、実際に私の身内に起こった事例を取り上げてみました。

先日、親類の3歳の女の子の喉にお箸が刺さって救急受診したという事件がありました。
お箸に限らず先の尖ったものは子供の手の届かない所に置いてあるらしいのですが、大人の真似をして自分で何でもやりたがる年頃なので、親の気づかないうちにお箸を手にして、何かの拍子に転んだようです。
幸いそれほど深く刺さっておらず、内視鏡でキズを確認後、経過観察となりました。

喉に異物が刺さった場合、ごく浅い刺し傷の場合は大きな問題はないようですが、深い場合、意識もはっきりしているからと言って刺入物は安易に抜いてはいけないようです。
病院での処置としては、キズを閉じた後抗生剤投与と経過観察で対応されるようです。
場合によってはCTで刺さったものの位置を確認後、内視鏡で刺したものを抜くという大掛かりな処置になるようです。
魚の骨を刺した場合でも要注意です。
いずれにしても、早めに医療機関を受診してキズの確認をしてもらいましょう。

(参考:学校内での事故や病気に対しての対応 出雲医師会)
http://www.izumo-med.or.jp/dl/member/safety/school_ermanu.pdf

【すぐに受診した方がよい時】
咽頭部の刺傷の場合は、刺傷分の確認・処置が困難なため、多くは早期受診が必要。
受診時には、刺したものを持参。破損のある場合には、同じもの(箸など)があれば持参。
☆口蓋扁桃外側深部に大血管があり、多量の出血は危険。
☆咽頭上方から斜め上方への深い刺入は、脳幹部損傷の危険。
特に、出血多量、呼吸障害、意識障害のある場合は救急車で搬送。
【魚骨異物】
小魚(アジ、ウナギなど)が原因で、痛み・嚥下困難がごく軽度の場合は下校後に受診でも可。痛み・嚥下困難がある場合は、早期受診。
比較的太い骨(タイ、サバなど)が原因の場合は、痛み・嚥下困難が軽度でも早期受診。

(参考:文献報告 副咽頭間隙に刺入した乳児箸異物例)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibirin1925/100/11/100_11_899/_pdf
小児では解剖学的に口腔から咽頭壁にかけて距離も大人に比較し短く、咽頭壁も脆弱なため内頸動脈閉塞症を発症する危険性が高い。内頸動脈閉塞症は内頸動脈が頸椎と異物の力で圧迫され動脈内膜が傷害されて生じ、受傷後48時間以内に発症することが多く、数々の神経症状を呈する。乳幼児の口腔内外傷や異物の症例で内頸動脈閉塞症が疑われる場合は必要に応じ入院し、 症状がなくても少なくとも受傷後48時間以内は神経症状や呼吸状態などの注意深い観察が必要と思われた。