ワクチンのおはなし

2012年 5月 29日 火曜日

先日、ポリオワクチンのニュースが話題になっていましたね。
今回は小児の予防接種についてお話したいと思います

 これを読んでいる皆さんは小さい頃自分がどんな予防接種を受けてきたか覚えていますか??
(私は記憶ないです)
時代によって多少の異なりはあったようですが、現在はおおむね以下のようになっています。

 

 

 

 

 

 

<定期接種>・・・原則公費負担
BCG ポリオ 三種混合(DPT:ジフテリア・百日咳・破傷風) 日本脳炎 MR(麻しん風しん)

<任意接種>・・・多くは自己負担。市町村によっては公費助成がある
ヒブ 小児用肺炎球菌 ロタウィルス B型肝炎 おたふく 水疱瘡 インフルエンザ

沢山ありますね・・・
注射によっては数回接種しなければならないものあります。
(例えばヒブワクチンは間隔をあけて計4回受けなければなりません。)

接種推奨時期が決まっていたり、注射同士の間隔をあけなきゃいけなかったり、もちろん接種当日のお子様の体調も考慮しなければいけないので小児科に連れて行く親は本当に大変です。(私も1児の母なのでその苦労はよ~く分かります!)なお、主治医の判断によっては注射の同時接種も可能です。

3種類の注射を同時接種。考えただけで痛そうです
しかしワクチンを受けていれば防げる病気、もしくはかかっても重症化しにくいと言われていますから、痛い思いはさせてしまうけれど大切な我が子のため!ぜひ受けさせておきたいところですよね( ^^ )

さてポリオのニュースに絡みますが・・・
上の表で赤字が生ワクチン、青字が不活化ワクチンと言われるものです。
 

生ワクチン生きた細菌やウイルスの毒性を弱めたもので、これを接種することによってその病気にかかった場合と同じように抵抗力(免疫)ができます。

不活化ワクチン細菌やウイルスを殺し抵抗力(免疫)をつくるのに必要な成分を取り出して毒性をなくして作ったものです。

ワクチンも医薬品なので残念ながら副作用(注射では副反応と言われます)はもちろんあります。
ポリオワクチンの件も生ワクチンによって極めて稀ですがポリオに感染し麻痺の障害が発生してしまった例が問題となりました。
今回は反響の大きさも反映したのか、国もいち早く不活化ワクチン導入に動いてくれたのですが、

まだまた日本はワクチンの面では世界的に遅れているところが多いのも実情。定期接種の種類は諸国に比べて少ないです。

国民がより平等に安全にワクチン接種できる世の中が来る日を望みます。

それにしても個人的には早くノロウィルスのワクチンを開発してほしいですね。
昨年は子供のがうつって私までダウン(><) 点滴までするはめに。
しばらくトイレとお友達だったのでした(笑)

絵画から病気がわかる!?

2012年 5月 20日 日曜日

こんにちは、夜間休日対応のH子です

先日、ぼーっとTVの美術番組を見ていたらボッティチェリの特集をやっていました。

「ヴィーナス誕生」「プリマベーラ」

そうそう、ん十年前、新婚旅行で行ったフィレンツエのウッフィー美術館で観たあの2枚。
当時は修復が終わったばかりでお化粧直ししたばかりの2枚は圧倒的に色鮮やかで
背景のブルーや色とりどりのお花たちが美しかった!
思ったよりかなり大きなサイズでビーナス達がドーンと私の心を揺さぶりました

ところで・・・

この2枚のビーナスを観て、「おやっ?」と違和感を感じませんか?
妙に首が長いし、ひどいなで肩だし、なんだか表情も物憂いカンジ・・・

そうです、

 実はこの絵画のモデルとなった女性、シモネッタには
結核の徴候がみられていると言われています

事実、彼女は肺結核で若くして亡くなってしまったのでした・・・。
                       (引用:「病気の社会史 文明に探る病因」立川昭二、NHKブックス152,1971)

むむむむむ、あのルネッサンス文明を謳歌していたであろうフィレンツエ市民の皆様も
病気には勝てなかったという事なのですね。
当時は梅毒やら、結核が大流行だったそうで、それで命を落とす人々が多かったそうです。

天下無敵のルネッサンスも感染症治療薬を開発するまではいかなかったんですね(><)

長らく人の命を脅かしてきた結核。
昭和の中ごろまで、不治の病だったのです。

日本で結核で亡くなった方は昭和23年で約14万人もいたらしいですよ!怖いですね~。

戦後、リファンピシン製剤、エタンブトールといったお薬が世界中に急速に広まり、
なおかつBCGなどの予防注射などの普及によって結核は死に至る病気ではなくなりました。
また、羅患する人も2010年には人口10万人あたり18まで低下しているそうです

こんな風に疾患の徴候がみられる絵画というのは意外と沢山あることが知られています。
(それだけ実物に忠実に描かれたということですよね。)

美術的な観点だけでなく医学的な観 点(!?)から絵画を観ると少し違った発見があるかもしれませんね(^^)

「乳鉢のはなし」

2012年 5月 12日 土曜日

調剤薬局の記憶を振り返ると、寒い冬は風邪の患者さんがいっぱい来局される季節。
小児クリニックが近くにあるような薬局では、待合室はぐったりしたお子さんを抱きかかえた親御さん達であふれかえります。

お子さん用の風邪薬といえばほとんどは粉薬。(もっと小さいお子さんだとシロップになりますが)
そして、咳を抑える薬、鼻水を抑える薬など何種類も出される粉薬を飲みやすいようにひとつに混ぜるときに活躍するのが

乳鉢です。

           

機械化や電子化の流れでどんどんと進化する調剤室内で、おそらく誕生したときから変わらぬ姿であろう少しベージュがかった白い陶器のお椀。

機能も粉薬を均一に混ぜるだけという単純なものですが、調べてみるとこの乳鉢による混合操作に関する文献なども出されている様子。

乳棒が粉を切るように回転することによる剪断、粉が乳鉢に押し付けられて縦回転する対流、そして運動による拡散。その効果が合わさって、粉薬が均一に混ざるのだそうな。

粉薬を棒でぐるぐるかき混ぜるような一見単純な操作にも、細かい検討がされていることに驚きです!! 
当時はそんなことに思いを巡らせる暇もなく、ぐったりしたお子さん達の一群を前に薬を混ぜてはお出しするのに精一杯でした。

 

さて、暖かくなってきましたが、しっかり栄養と休養をとって、

体調を崩されませんようお身体お気をつけください。