ルノワールのリウマチとの闘いのはなし

2013年 10月 11日 金曜日

最近は、涼しくなり秋となりましたね。皆様いかがお過ごしでしょうか。秋と言えば芸術の秋ですね。今日は芸術の秋、ということで、芸術のお話を。

「舟遊びの人々の昼食」などで有名なピエール=オーギュスト・ルノワール

後世に多くの美しい作品を残しましたが、人生後半の約30年間を関節リウマチと闘いながらキャンバスに向かったことで知られています。

ルノワールは47歳の時に両手指のこわばりと痛みをきたしました。56歳で関節炎を発症。主治医に関節リウマチといわれ、鎮痛剤で痛みを抑えていましたが、歩行困難になるほど症状は悪化しました。医者の勧めで南仏ニースの近くのカーニュに居を移し療養していましたが、病気の進行はとめられず、やがて車椅子での生活を余儀なくされました。

今でこそ有効な治療薬が次々と発売され、治る病気となりつつあるリウマチですが、頃は19世紀。治療薬などなく、痛みも想像を絶するものだったことでしょう。

ましてやルノワールは画家。手足の硬直や痛みというのは致命的ともいえる症状です。しかし、ルノワールは絵を描くことを諦めませんでした。指の関節が変形して腫れ上がり、自分で筆を手に取ることができなくなっても、周囲の人に指の間に筆を挟んでもらい、何点ものすばらしい作品を描き続けました。

彼はこんな言葉を残しています。

「痛みはいつか消えるが、美は永遠に残る」。

「私には芸術という素晴らしい世界があるので、この痛みに耐えられる」

闘病を知り、改めて晩年の作品をみてみました。絵の中の人物はやわらかく幸せそうに微笑んでいますが、病気に負けない強い意思と、たとえ病気になっても、あきらめずにやりたいことにチャレンジすることができるという、希望がこめられているように感じてなりません。

そんな風にいつもと違った角度から見てみると今まで知っていると思っていた芸術作品も、また一味違った味わいがありますね。

毎日のお仕事が忙しいと、普段はなかなか芸術に触れる機会の無い方も多いかなと思いますが、芸術の秋、芸術鑑賞におでかけしてみるのもいいかも知れませんね。

病院薬剤師のこぼればなし

2013年 8月 1日 木曜日

暑中お見舞い申し上げます

暑い日が続きますが、暑さや寒さだけでなく患者さんのうったえは、昼夜を問いません。
以前、病院で働いていたころ、当直中に来られる患者さんも様々いらっしゃいました!!
時間と勝負のtPA(※)施行患者さんや過量服用・PTP誤飲など急を要するもの。
中には、学生さんが飲み過ぎて担ぎ込まれ、処置後打撲に対し湿布をお渡ししたこともあり、
夜間行き場のない思いを覚えたこともあります
喘息発作で運び込まれた患者さんに、救外で明け方に吸入指導をしたり、色んな経験をしました。
なぜ今?と疑問に思うケースもありましたが、医師を筆頭にスタッフ一丸となり患者さんの治療に努めていました。

直接患者さんに携わった、そんな経験があるからこそ、お電話で患者さんのお顔が直接見えなくても、頑張れると思います。
今までの経験を活かし、患者さんに寄り添える薬剤師として、今はCS業務でお力になれるように、よりよい対応に努めていこうと心がけています

※tPA・・・血栓を溶かす薬(血栓溶解薬)。脳梗塞に対して使用される。

グレープフルーツのはなし

2013年 7月 15日 月曜日

みなさんこんにちは!今回は、駆け出し実習生時代にあったエピソードをご紹介します

食べ物と薬の飲み合わせ…一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?中でも、グレープフルーツと高血圧治療薬の一種であるCa拮抗剤の相互作用は有名ですね。
薬剤師からは服薬指導の際、患者さんに注意喚起を行います。
実習中、アムロジピンの処方が出ている患者さんに、
グレープフルーツとの併用は避けてくださいね」との服薬指導を行ったところ、

「私柑橘系の果物が好きなのに、食べられなくなるなんて寂しいわ~。」
「ご近所さんからいっぱいおみかん頂いたところなのに~。」
「高血圧の人はグレープフルーツ食べちゃいけないって聞いてるから、今までも食べてないわよ。」
とのお答えが。

おやおや???
薬の飲み合わせが有名になるのはいいことですが、患者さんの誤解も多いようです。

このグレープフルーツCa拮抗薬の併用、いったい何がいけないのでしょうか?

難しく言えば、
グレープフルーツに含まれているフラノクマリンという物質がCa拮抗薬の代謝酵素であるCYP3A4を阻害し、体内の薬物濃度が上昇する危険性があるため、併用注意」となっています。

平たく言えば、
グレープフルーツに含まれる物質によって薬の代謝が遅くなるので、
必要以上に血圧が下がってしまう危険性がありますよ!」ということです。

まずポイントとして、

すべての柑橘類にフラノクマリンが含まれているわけではない

ということ。

フラノクマリンが含まれている、つまりCa拮抗薬と併用注意となるのは、グレープフルーツ、ブンタン、スウィーティ―など。一方、バレンシアオレンジ、レモン、かぼす、温州みかん等はCa拮抗薬と併用しても薬の作用が強くなることはありません

そして、グレープフルーツ等がCa拮抗薬と併用注意である理由は「薬の代謝酵素を阻害するから」であって、「高血圧だから」ではないのがお分かりでしょうか?
グレープフルーツを食べると血圧が上がるから良くない、と勘違いされている方も多いようですが、
グレープフルーツ自体が血圧を上げることはありません。(もちろん、下げることもありません。)

薬の作用が強くなるから注意が必要、ということを覚えてくださいね。

ただし、高血圧の薬には、Ca拮抗薬アンジオテンシンII受容体拮抗薬ACE阻害薬利尿薬等、様々な種類がありますが、
この中でグレープフルーツとの相互作用に関連するのはCa拮抗薬のみ。

Ca拮抗薬以外の種類の高血圧のお薬を飲まれている方は、グレープフルーツとの相互作用を気にすることはないのです。

ご自身が高血圧のお薬を服用中で、自分が服用している薬がどの種類に当てはまるのか不明な際は、薬剤師に尋ねてみてくださいね。

かといって、
「じゃあCa拮抗薬さえ飲んでなければ問題ないのね!」
と安心することはできません…
グレープフルーツは、Ca拮抗薬のほかにも、抗血小板剤(血をサラサラにするお薬)や免疫抑制剤(免疫を抑えるお薬)といった他の病気で使う薬の作用にも影響します!!

ご自身の服用されている薬は何なのか?グレープフルーツとの併用は大丈夫か?
疑問に思ったら気軽に薬剤師に尋ねてみてくださいね